春は別れと出会いの季節…。

 近年の卒業式では、「蛍の光」や「仰げば尊し」にかわって、「旅立ちの日に」という曲が全国の様々な学校で取り上げられるようになってきました。旋律の美しさだけでなく、歌詞の言葉が児童生徒にとって身近なものに感じられることが選曲の理由の一つです。
 この「旅立ちの日に」という曲は、1991年にある中学校の先生方が「歌声の響く学校」をめざして取り組みを行った3年間の集大成として作られました。はじめはなかなか声を出して歌わなかった生徒たちも卒業する頃には、自分たちから進んで合唱に取り組むようになったそうです。この曲は先生方の「卒業する生徒たちのために、何か記念になる、世界にひとつしかないものを残したい」との強い思いから生まれたものです。出来上がった曲は最初はたった一度きり、「3年生を送る会」で教職員たちから卒業生に向けて歌うためのサプライズの曲でしたが、翌年からその学校の卒業生たちが歌うようになりました。その後しばらくはこの中学校だけの合唱曲でしたが、まわりの小中学校でも使われだしたことで、1998年頃までに全国の学校で歌われるようになっています。

 昨日158名の児童が巣立っていきました。
 卒業生全員で心を合わせて最後に歌う曲…。それが「旅立ちの日に」です。
 校舎や教室、グラウンドから見える風景を思い浮かべながら歌う1番、さりげない毎日や仲間たちと過ごした日々をふりかえりながら歌う2番。長いようで短かった学校生活。卒業生たちは、様々な思いをこめて一生懸命歌いきりました。
 卒業生の歌声を聴きながら、いつも思い起こすのは、初めて彼らと出会ったときの姿です。初めての授業、初めて聴いた歌声、音楽会や様々な行事…。一緒に笑ったり、悩んだりしたことを昨日のことのように思い出します。一人ひとりの晴れやかな顔を見るにつけ、心身ともに大きく成長した彼らに幸多かれと祈らずにはいられません。そしていつの日か巣立っていった卒業生と再び会えることを楽しみにしています。

4年生副担任 稲森 真弓