「本のプレゼント」と板書された黒板を見て、低学年の子どもたちは必ず

 「え~っ先生、本がもらえるの?」と嬉しそうにたずねます。

 「ちがうのよ、お友達にプレゼントするのよ。」と、私。

 「友だちに本をあげるの?」と、子どもたち。

 「そう、自分のお気に入りの本をね、友達に紹介してあげるの。それを先生は本のプレゼントと言っているのよ。」と種あかしします。

  6年生は、国語で宮沢賢治の「やまなし」を読みました。そこで、「やまなし」をきっかけに宮沢賢治の作品を53冊も教室に持ち込みました。本は移動式のラックに入れて教室の後に置きました。さすがに6年生です。こうしておくと、子どもたちはつぎつぎと宮沢賢治の本を読み進めます。

  「グスコーブドリの伝説」「セロ弾きのゴーシュ」「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」「永訣の朝」等自分のお気に入りの本や詩を子どもたちは読みました。その一部を紹介します。

A君からの「本のプレゼント」

 「なめとこ山の熊」を読んで、ぼくがみんなにプレゼントしたいのは、小十郎の気持ちです。ぼくは幼い時にもこの本を読みました。その時は、「小十郎は熊を殺す悪い人」としか思っていませんでした。しかし、今読み返してみると、小十郎は熊を殺すときも熊を思いやっていることが分かりました。みなさんにも、賢治のこの心のやさしさを感じてもらえれば幸いです。

 

 子どもたちの内面世界の豊かさに、読み手の私の心もまた温かくなるのです。

6年担任   鎌田 裕子