コンピューターをはじめとした校内の情報機器がちゃんと使えるよう整備するのも情報担当である私の仕事のひとつです。トラブル時は全力を尽くして対応しています。

後期になってからのある日、コンピューター教室の機器にトラブルが発生し、数台のパソコンが使用できなくなってしまいました。教室内のネットワーク機器の故障と判断し、保守サービスの方に来ていただくことにしました。コールセンターの受付の方に「明日の3時間目から6時間目までコンピューター教室での授業が入っているので、3時間目の始まる10:50に間に合うように機器を交換してほしいのです。」と無理を言ってお願いしました。

翌日、大阪を朝早く出発して保守サービスの方が来てくださり、3時間目の開始時刻に間に合うように時間を気にしながら作業してくださいました。作業を待つ間、机上のキーボードやマウスを整えて回っていた時、私はキーのひとつが取れてしまったキーボードがあることに気づきました。
作業中の保守の方に「キーボードの『矢印キー』がひとつ取れてしまっているのですが、『矢印キー』を部品として取り寄せはできますか。」と尋ねました。すると、「ひとつひとつのキーは部品として取り扱っていないので、キーボードごと交換することになります。」とのこと。仕方がないので、「矢印キー」が周辺に落ちていないか捜して、なければまたコールセンターに連絡することにしました。しかし、辺りを見ても小さいキーは見つかりませんでした。

無事に作業は終了し、ちょうど授業開始時刻に間に合いました。その方は「間に合いましたよね。良かったです。」と安堵され、私は「無事に授業が開始できます。ありがとうございました。」とお礼を言って玄関まで見送ろうとしました。すると、玄関でその方は「私の仕事用のキーボードが同じ機種で、確か今、車に積んでいるはずなので見てきます。」と言って小走りで出て行かれたのです。ほどなく戻られたその方の手には「矢印キー」がひとつ握られていました。

「え?ご自分のキーボードからはずして来てくださったのですか?」と驚く私に、その方は「どうぞ。教室のキーボードにつけてください。」と言ってくださったのです。「でも、いただくわけには・・・。もう一度捜して見つからなかったら、また正式にコールセンターに連絡しますので。」と遠慮しましたが、「私は矢印キーがなくても大丈夫ですから、あのキーボードにつけてあげてください。授業が始まりますよ。」と笑顔で言って帰られました。

大阪から朝早く駆けつけてくださっただけでもありがたかったのに、「矢印キー」の件は正式な依頼ではないにも関わらず、ご親切でこのようにしてくださったのです。“仕事への使命感”に加え、「子ども達にいつもコンピューターをベストコンディションで活用してほしい」という“思い”がひしひしと伝わってきました。

急いでコンピューター教室に行き、欠けていたキーボードにその方が“分かち与えてくださった「矢印キー」”を取り付けて、無事に授業が始まりました。

保護者の方々や教職員以外にも、スムーズに授業が行えるように心をくだいて、見えないところで支えてくださっている方がいらっしゃるということを子ども達にも伝えたいです。
感謝の思いで胸が熱くなった一日でした。

情報担当 井上 朋美