10月13日(木) 「銀河鉄道の夜」
このシリーズ本来の目的は音読によって名作を楽しむことです。日本語の美しさやリズムを体にしみこませることです。家庭で、両親や年上の兄弟、姉妹が音読し、子どもたちは同じところを繰り返して音読します。教室では教師がまず音読し、児童は繰り返します。
詩をのぞく五つの作品、『セロ弾きのゴーシュ』『毒もみのすきな署長さん』『土神ときつね』『なめとこ山の熊』『銀河鉄道の夜』の音読破が 4 月の下旬にスタートしました。
「シスター、おもしろいよ、こんなの好きだよ」こんな声を聞いて、私はほっとするのでしたが、気がかりなのは、最後にやってくる『銀河鉄道の夜』です。題名から受け取る印象だけで、児童が楽しみにしているのを知ると、もっと心がさわぎました。
『銀河鉄道の夜』の音読を始めたのは
9
月
1
日。「手を変え、品を変え」ではありませんが、クラスによって、いろいろと工夫しながら、
5
時間で音読破完了です。毎時間、最後の
5
分間はノートに、心に残ったことを書かせましたが、ノートには日付だけしか残されていませんでした。「いいのです。いいのです。それでいい!」と私はつぶやいていました。
ノートのごく一部をご紹介しましょう。
「ジョヴァンニみたいな家族思いの少年が日本にふえたら、日本はすごい活気につつまれるかも。」
「何故?ジョヴァンニだの、カムパネルラだの、日本人じゃないみたい。二人が汽車に乗ったのはわかったけれど、後はさっぱりわからない、困るなあ、何がどうなっているのかわからないよ。」
「僕には話の意味がまったく分からない。どうしよう。」
「もう後一回で読み終わる。うれしいなあ。早く終わって次に行きたいなあ。」
「やっと最後の時間がきた。うれしくてたまりません。そうか、ジョヴァンニは夢をみていたのか。でも、何故、汽車に死んだ人が乗って来たの?」
「さそりの火が一番印象に残っている。さそりのお祈りはすごい。」
最後に一人が言いました。
「シスター、ノートが半分以上残ったよ、ノート、いらなかったのじゃない?」
うなずいただけで声には出さなかったのですが、私は答えていました。「本当にそうでした。あなた方の心や体の中に残っていれば、それでよかったの。それは消えることはないのですから。」
特別国語担当 シスターアンミリアム木村