社会科の夏、ズームアップの夏です!本校で行っている社会科課外活動、ズームアップについて紹介します。

~本校の社会科課外活動の紹介~

社会担当 遠藤 克哉

1.はじめに

 「社会科ズームアップ」とは、本校の松田正一元教諭が2004年度から始めた課外活動です。以来、本校の社会科担当の教諭を中心に続けてきて、今年度で7年目を迎えます。教室での学習だけでなく、また通常授業日の社会見学では行けないようなところに、子どもたちと学びに出かけよう、との思いで実施しています。

 

2.ズームアップの概要

 「ズームアップ」のあらましは、以下の通りです。

○夏休みの実施のために、各学年の社会科の学習状況(単元)に合わせてコースを設定、計画する。(6,7コース)

○7月上旬には児童に通知して、希望を募る。希望者の人数に応じて(主に該当学年から)引率者を手配する。

○夏休み期間中に実施して、子どもたちは見学結果を自由研究にまとめる。

 

 これまで、次のようなコースを実施してきました。

☆2004年度

 賀茂川源流探検コース、関西本線・笠置コース、琵琶湖疎水取入口探検コース

 舞鶴探検コース、    伊賀上野コース、    宇治探検コース、        「鯖街道を行く」コース

☆2006年度

 飛鳥コース、       聖護院八ッ橋・消防署・京都府警察広報センター コース

 安土探検コース、    平城宮・薬師寺コース、関西本線・笠置コース、

 三川合流地点コース、 宇治探検コース、    大阪造幣局・鉄道博物館コース

☆2007年度

 トヨタ工場見学コース、 水の都・京都コース、  東大寺・薬師寺コース

 宇治・平等院コース、  関が原合戦コース、  信楽焼・焼き物体験コース

☆2009年度

 座禅体験コース、    西陣織見学コース、  清水焼・焼き物体験コース

 遺跡発掘コース、    友禅染・京絞りコース、東大寺・平城宮コース

 

 様々なコースを作り、試行錯誤をくり返しながら、これまで行ってきています。

 

3.体験を大切にするズームアップ(友禅染・京絞り体験コースを例に)

 日常の授業ではできないことをしよう、という考えから、ズームアップでは体験学習を積極的に取り入れています。次に、友禅染・京絞り体験コースを例に紹介します。

○友禅染・京絞り体験コース概要(教員研修会用資料より)

 しばらく前にNHKスペシャル「アジア古都物語」のシリーズで、京都が「水の都」として紹介されたことがありました。このコースは、そのことに着想を得て作られたものです。京都は、平安時代から地下水脈の豊富な都で、染め物、和菓子、お酒など、あらゆるものにその美しい水が利用されてきました。

 今回は、まず京都御苑内の「御所の三名水」から出発して、友禅染、そして京絞りと、いずれもこの「水」と関わりの深いものを取り上げて、染め物については両方とも体験学習を行いました。それぞれの工房では、懇切丁寧に染め方・絞り方を教えて下さり、また建物内を見学させて下さいました。引率した教師にとっても、今後の新しい伝統産業のあり方について考える、とても貴重な体験になりました。

 

 

 上の案内にありますように、このコースでは工房の先生からお話を伺い、また職人の方々が作業される様子を見学しながら学習を行いますが、併せて友禅染の体験と京絞りの体験を取り入れています。

↑友禅染の工房を見学 ↑京絞りの体験(絞りのところ)
↑京絞りの体験(染めのところ) ↑京絞りの作品が完成

 

 このように、見学→体験という流れの中で、伝統工芸の技術の高さ・素晴らしさを知り、感じることができました。また、多くの子どもたちは、こうした体験を通して、ものを作る喜びも得てくれていると思います。このことは、子どもたちが自由研究に自らの作品を紹介していることからも読み取ることができます。

↑自由研究での友禅染の作品 ↑自由研究での京絞りの作品

 

4.子どもたちの自由研究での感想から

 ズームアップを計画した教員たちにとって一番楽しみなのは、当日学習や体験をしているときの子どもたちの笑顔、そして熱中しているときの眼差しです。そして、夏休みが終わって、その体験が自由研究という形となって、再び教員たちの目の前に現れたとき、もう一度その喜びがよみがえってきます。ここでは、自由研究の作品に記されていた、子どもたちの感想を紹介したいと思います。

 

○世界中から多くの観光客をひきつける古都・京都は、1200年もの長い間、日本の都として発展してきましたが、それをささえているのが、豊富できれいな地下水であったことがわかりました。今後、いつまでも末永く京都が京都であるためにきれいな地下水を守るため、ゴミを出したり、流したりしないなど、自分のできることはしっかりとしなければならないと思いました。(水の都京都コース、3年生女子)

○座禅も精進料理も初めての体験なのでとても心配でした。座禅はきんちょうしたけど、あぐらを組むことも、目をとじても無にはなれませんでした。まわりの音やおぼうさんの足音も耳に入ってしまいました。精進料理ではナスやゆばがあり、味がうすく、おいしいとは思えなかったのですが、肉や魚のない生活をゴマやとうふでくふうしていると聞き、おどろきました。おぼうさんの修行は考えられないくらい大変だと感じました。(座禅体験コース、3年生男子)

○建仁寺の本どうでざぜんをしました。その時すこしうごいたけど、がんばってうごかないようにしました。そして、ごはんになると、おぜんのようなものがあったので、早く食べたくなりました。おきょうをとなえおわると食べはじめます。そして食べおわると、次はデザートの番です。でも、デザートといっても本当のデザートではありません。お寺らしいまんじゅうとお茶をのみます。とてもおいしかったです。また行きたいです。(座禅体験コース、3年生女子)

○ズームアップで楽しかったことは、自分ではたおりを体けんできたことです。手と足といっしょに動かしております。足をずっとふむのが力がいりました。しょく人さんがおっているのが、おどっているみたいにリズムよく、見ていて楽しくなりました。むずかしいもようをつづけておっていくのは大へんだなと思いました。(西陣織体験コース、3年生女子)

○行く前は、昔の人がどんな生活をしていたのか、(埋蔵文化財研究所の)職員の方がどんな仕事をしているのかと思っていました。たくさんの出土品を見せていただいて、1時間くらい発掘をして4つしか見つけられなかったぼくは、職員の方がどれだけ苦労をして見つけたのだろうと思いました。また、昔の人が家を建て、狩りや米作りをして、石包丁を使って料理をしていたのがわかりました。火おこしも体験したけれど、とても力がいると思いました。今の時代は回せば火がつくけれど、昔の人はとても不便だったのだと思いました。(遺跡発掘コース、4年生男子)

 

 作品そのものや児童の感想を通して、子どもたちも楽しんで参加することができていると感じます。また、十分に時間をとって見学に出かけることで、そのときにしかできない貴重な学びができたと思います。

 

5.2010年度のズームアップ

 さて、今年度のズームアップですが、次のようなコースを設けて、実施しました。(ただし、8/12の宇治見学Bコースは台風による大雨警報の為、中止となりました。)

○7/29(木) 関が原合戦コース

○8/ 4(水) 宇治見学Aコース

○8/ 5(木) 友禅染・京絞り体験Aコース

○8/ 6(金) 友禅染・京絞り体験Bコース

○8/ 7(土) 東大寺・平城宮コース

○8/10(火) 西陣織見学Aコース

○8/11(水) 西陣織見学Bコース

○8/12(木) 宇治見学Bコース

 

 同じコースを2回に分けて実施していますのは、その方が、それぞれの回の人数を少なくまとめて、集中して先生の話を聴き、体験も落ち着いて出来るためです。今年度も、とても充実したズームアップができました。

 子どもたちが始業日に持ってきてくれる自由研究を、とても楽しみにしています。