国語部の取組

 今年度の国語部は、何を研究しているのかについてまず、ご紹介します。
 国語部の研究主題は、「『対話力』を育む国語教育のあり方~聞く力を土台に共感しながら 伝え合う力を育成~」です。では、何故対話力や聞く力は重要なのでしょうか。そこには、 子どもたちを育てようとする私達の願いと問題意識があります。小学校では、先生の話から スタートする学習活動がほとんどを占めます。先生の話を聞く力が十分でなければ、学習の方法はわからず、 理解も遅れます。聞くべきは先生の話だけではなく、友だちの意見から学ぶことも、 子どもたちの成長に大変大きな役割があります。友だちの意見を聞く中で理解力を深め、 意見と理由のつながりを理解する中で論理性が高まり、友だちの意見と自分の意見を比べる中で自分の学習や問題への解答を振り返り、対話(交流)を通して自分の考えに磨きをかけます。つまり、聞くことと対話(交流)することは学習の土台であり、学習発展の保障なのです。このことは、小学校が、中学校、高校の学習の基礎基本を創る段階であることを考えれば一層重要となります。
 では、各学年の取組をご紹介します。

<2年生>

2年生は自分の意見や思ったことを、積極的に手をあげて発表する子が多く、話すことへの意欲が高い学年です。また、ちょっぴり恥ずかしがり屋の子も発表に挑戦できるように、教師は日常の声かけを工夫しています。一つ目は声のボリュームを中心とした指導です。話すときには、大きな声で、仲間のほうを見て発表できるように働きかけています。二つ目は「話型(わけい)」を使うことです。「~と思います。なぜかというと~」「理由は2つあります。」「○○さんの意見に付け足しで、さらに~と思います。」などわかりやすい表現を工夫するように指導しています。自分の考えをうまく言葉にできなかったり、自信がなくて声が小さくなってしまったりする子もいて、学習の課題のある毎日ですが、仲間に話を聞いてもらえたという達成感が得られることは、2年生の子どもたちにとってとても大切なことです。
 一
方、聞くことに関しては、しっかりと聞く姿勢が身についている子もいれば、集中が続かず、聞きもらしが多くなる子もいます。聞く内容が興味を持てる話題であることは、まず大切なことですが、すばやく集中し、大切なことをもらさず聞き取る能力を子どもたちの中に養っていきたいと思っています。学校では、NDスタイル(相手の目をみて、最後まで、うなずきながら聞き取ろう)を意識して取り組んでいます。
さて、今年度の研究授業は 「ともこさんは、どこかな」という「大事なことを落とさずに、話したり聞いたりしよう」の単元に取り組みました。「ともこさんは、どこかな」は、遊園地で迷子の場内アナウンスをするという設定で、話し手が迷子の特徴を伝え、聞き手はその特徴を聞き取り、教科書に描かれた大勢の人々の中から、お目当ての人物を探し出すゲーム形式の言語活動です。話し手も聞き手も両方を体験しながら「話すこと、聞くこと」の基礎を学習することができます。この授業で目指したことは、単なるゲームに終わらないことのほか、迷子を素早く見つけるために、迷子の様子がよくわかる、必要最低限な大事な情報を聞き取って、それについて考えることです。さらに、その学習(または、活動)を通して、実生活での「話す・聞く」力を「伝え合う」力へとつなげることを重視しました。日常生活の中で、大切な情報を、一度で聞き取らねばならない場面は多いため、話し手は何度も繰り返し説明するのではなく、2回という限られた回数の説明で、大切な情報を正確に聞き取る意識も育てていこうと考えました。
授業をしてみて、子どもたちは聞き取る活動を楽しみ、もっとやってみたいと意欲満々で、当日中にもう一時間、国語の時間を設けたほどでした。話す活動・聞く活動ともに、目的が明確だったことで、集中して取り組むことができたと思います。今後も、2年生の子どもたちの力に合った「話す・聞く」の言語活動を積極的に行い、子どもたちの力を高めていきたいと思います。

 

 

<3年生>  生きる力を育むために、子どもたちの未来のために。

 新しい学習指導要領は、子どもたちの現状をふまえ、「生きる力」を育むという理念のもと、知識や技能の習得とともに思考力・判断力・表現力などの育成を重視しています。「生きる力」を育むには、基礎的・基本的な知識及び技能を習得させ,これらを活用して課題を解決する思考力,判断力,表現力等の育成が大切です。もちろん自ら学習に取り組む意欲や態度を養うことも謳われています。それらを実現するために「言語活動の充実」が最優先課題になっています。
 本校でも昨年より「対話力を育む」という研究課題を掲げ、実践研究を行っております。これは本学院のミッションに含まれている「対話する」の具現化に通じるものです。国語部では、聞く力をつけることをメインテーマに、言語力育成のために色々な取り組みをしています。その一つに中学年で実施されている「言葉の時間」という学習があります。この学習のねらいは、①筋道を立てて書いたり、話したりすることで論理的思考力を鍛えること、②他者の話を聴き、自分の考えを分かり易く話して対話すること、③多面的な物の見方や、情報の分析の方法を知り活用すること等にあります。この時間の基本スキルとして問答法(ソクラテスやプラトンが相手の考えを引き出す時に用いた方法)を活用し、論理的な思考回路の構築を行っていきます。児童は、「私は、○○だと思う。何故かというと・・・だからである。」というように自分の考えの結論を初めに明記し、その根拠を具体的で客観的に言語化することを要求されます。教師は、根拠が「好きだからとか、おもしろいから等」の印象批評ではなく、相手が納得する客観的な理由になるよう子ども達にアドバイスしていきます。

では、先日「言葉の時間」に行いました3年生の「絵の分析」についてご紹介します。

「絵を見て情報を分析する」 学習の流れ

     全体の絵の様子をつかみます。(テーマをつかむ)

     絵の設定を分析します。分析の要素は、場所、 季節、時間(時に時代も)、人物(年齢、性別、 職業等)人物の考えや様子、音、香り

 例えば、「この絵の季節はいつですか?」という問い に対して、問答法(児童には問答ゲームと言っている) で答えるのです。児童は「この絵の季節は、夏だと思い ます。その理由は2つあります。1つは、絵の中の人物が着ているものが半袖であること、もう一つは、画面奥の湖で泳いでいる人がいるからです」という風に答えていきます。絵の中に証拠を見つけて話すようになると、思考の過程が論理的になり思考も自然に鍛えられていきます。また相手が納得できるような話し方ができるようになるので対話力を高めることにもつながります。

児童が自ら問答法を活用し、色々な場面で論理的に話そうとすることで、学習がより知的になり、授業内容も深まるように思います。国語だけでなく他の教科学習やHRでも問答法で話すようにすると、論理的な思考力が身についていくと考えています。ご家庭でもお子さんとの会話で「理由は何?」「何故そうしたいの?」「何のためにするの?」と問いかけてみてください。きっとお子さんの考えが鍛えられ、より賢い子になることでしょう。

 

年生>

6 年生は対話(交流)を通して、自分の読みや意見を深める学習の実現を願っています。国語授業において、友だちとの読みの交流、「話し合い聞き合う:対話」は重要な位置を占めます。自分の読みや意見が高まったり豊かになったりする対話(交流)活動を実現するためには、必須条件があります。それが、自分の意見をもつということです。これは、交流における学習の足場ともなるものです。また、課題によっては一生懸命考えたけれども自分の意見がもてなかったというときもあります。自分なりに真剣に考えようとすることでもあります。学習課題(問い)に対して、自分の意見(問いに対する自分の解答)をもとうと真剣に思考することが「一人学び」です。6年生では、各自が自分の読みや意見をもとうとする「一人学び」の段階を授業に必ず入れるようにしています。

 「一人学び」の次の段階が、「みんな学び」です。要するに交流をし、対話をし、話を聞き、思考し、評価する段階です。ここで重視していることは、場の設定と交流のポイントを明示することです。具体的にこれらを実践例で紹介します。

 9月に行った単元「自分の考えを明確に伝えよう」では、教科書の 大牟田稔氏の 「平和のとりでを築く」の他に、早乙女愛氏の「コスタリカで『平和』を撮る」、足立力也氏の「平和をつくる教育」を資料として読みました。そして、そこから「平和」とは何かを考え、自分なりの考えを二文(自分の主張と根拠)で書き(「一人学び」)、自分の主張や根拠と対比して友だちの意見を聞きました(「みんな学び」)。そのことにより、一人一人の考える「平和」とは何かという問いかけを深めていくことができました。3つの教材を読むようにしたことも、表面的な「平和」ではなく、子どもたちなりの「平和」を考える力になりました。友だちの考えに触れ、学び、自分の考えを確かなものにできた単元でした。

 

 

 

NDトピックス   【スピーチについて】

 本校では、全校をあげて朝のスピーチに取り組んでいます。1年生から6年生まで、各学年の段階に合わせてテーマを設定し、子どもたちの話す力を養うことはもちろん、「聞く」力も養うべく子どもたちへの指導を行っています。スピーチは、1人の考えを全員で最後まで聞くものです。ですから、上記2年生の実践にもありました、「相手の目をみて、最後まで、うなずきながら聞き取ろう」というNDスタイルを意識させることから始めました。

 また、スピーチにおいても『対話能力を育む』ために、聞いている子どもたちからの質問を受け、それに答えるという形で言葉のキャッチボールを行っています。テーマや内容によってその質問も様々ですが、思いもよらない子どもの一面が引き出され、それをクラスで共有できることがこの対話型スピーチのよさだと思います。