授業紹介 1月号 ― 社会科 研究授業「水不足の中での生活を考えよう」
〈香川県の、とある市の市長になってみる
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授業者 松谷 如雪
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今回の授業の単元は、「日本の国土」です。その中で、水不足で悩む四国地方を取り上げました。 本校の児童の多くが住む京都市は、琵琶湖の恩恵により、水不足に悩むことが少なく、そのため、水不足ということ自体が想像しにくい環境にあると言えます。社会科の大きな目標として、身近でない学習対象を、いかに自らの経験や想像をもとに考えるかを挙げています。 こうした考えに基づき、今回は児童が香川県のとある市の市長となり、水が不足し始めた自らの市をどのような方向に導いていくのかを考えさせました。
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〈ダムの水が減ってきました
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「今、9月です。しかし、7月から雨があまり降っていません。ダムの水がどんどん減ってきています。さあどうしますか」
この言葉を合図に、ダムから取水することを制限する方法を導きました。そこからダムの水が残り何パーセントになったら、制限を行うかを考えました。
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〈市長の決断力を体験する〉
いよいよ決断の時です。「ダムが残り何パーセントになると第一次制限をしますか」と問うと、80%や50%など、様々な意見が出てきました。制限は第四次までありますが、第四次を5%から始めると主張する、厳しい市長も出てきました。 この取水制限を考えることにより、水は無限にあるものではなく、限りあるものだということに気付かせたいと考えました。
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〈取水制限だけで良いのかな?〉
取水制限を学んだ上で、そのほかにも水が減ってきた時に、市長としてできる方法を考えました。「家庭で水の節約をするように言う」や「ほかの県から水をもらう」などの意見が出てきました。
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〈水の使用用途に優先順位を付けてみよう〉
市長として、取水制限に加えて水の使われ方にも気を配らなければなりません。水の使用用途は大きく分けて、「生活用水」「農業用水」「工業用水」の3種類に分かれます。水が減ってきた中で、この3種類への給水量を【まず最初に減らしてもよいもの】、【最後まで減らせないもの】という観点から、4人1組の話し合いを通して考えてみました。ヒントとして、実際にどのくらいの割合で、3種類の水を使っているのかを提示しました。 実際には、使用用途による給水量の制限はしていません。しかし、こうしたことを考えることにより、水の使われ方を考える良い契機になるのではないかと考えました。
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〈話し合いの結果を発表しよう〉
話し合いの結果を、各班で発表しました。「生活用水は節約できるので、まず最初に減らしても良い」や「農業用水を減らすと、食物が無くなるから最後にする」といった意見が出てきました。 このような話し合いを通じて、子どもたちはどの使用用途も大事であり、優先順位をつけることは難しいことを感じたのではないでしょうか。水不足になるということは、生活の様々な局面に影響が出ます。この取り組みには、そのことに気付いて欲しいとの思いを込めました。
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〈水の大切さを知る
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この授業を通し、水不足に陥った場合、自らの生活に影響が出るだけではなく、農業や工業などの社会全体に広がっていくことに気づかせたいと考えました。現在、世界規模での水不足が問題になってきています。その背景には、世界的な人口の増加や環境汚染の問題が潜んでいます。 水という、人間が生きていく上で不可欠なものが、無限に存在しないことを知ることが大切です。そして「命の水」である水を無駄にしないよう、日々の暮らしの中で節水を心がけることの重要性を伝えたいと思い、この授業を行いました。
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《ND社会科トピックス》 取水制限とは?
「降雨量が少ないなどの理由で、ダムやそのほかの水を蓄える施設の貯水量が少なくなったときに、河川やダムから取る水の量を制限すること」です。
この基準は、全国一律のものがあるわけではなく、各都道府県や自治体が決定します。今回の授業では、香川県の大きな水源である「早明浦(さめうら)ダム」を取り上げました。香川県政策部水資源対策課への電話による聞き取りを行い、第一次制限ではダムの貯水量【60%】、二次制限では【45%】三次制限では【35%】、四次制限では【15%】という設定で授業を進めました。この数字も確定しているわけではなく、あくまでも目安ということでした。四次制限になると貯水量の減少が著しく進んでいる状態であるため、この段階に進まないよう、県では様々な対策を考えています。
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登録日: 2010年1月30日 / 更新日: 2010年2月1日