授業紹介8月号 図画工作科  ―写生会・写生展への取り組み― 

 ●写生会について

 本校では伝統的な行事として、毎年春に写生会を行っています。
これまでは、多くの小・中学校で写生会が行われていました。しかし、近年は、実施している学校は減少しているようです。その背景には、学習指導要領の改訂や、学校5日制の導入に伴い授業時間数が削減され、写生会のような行事のための時間の確保が難しくなったことなどが関係しているように思われます。

 このような時代の流れにある中で、本校では、写生会が子ども達の心を磨く大切な表現活動であると捉え、じっくりと継続的に取り組んでいます。実際に春の日差しや風を肌で感じ、木々のざわめきや人々の声を耳にしながら、五感を通して自然を感じ、その豊かさに気持ちを向けることで、子ども達の情感を育てる機会になればと願っています。

 


●写生会テーマについて

 本校の写生会では、子ども達の発達段階に応じて以下のテーマを設定しています。

1年生「はるのしょくぶつえん」
 2年生「花と○○」
 3年生「木と○○」
 4年生「私の樹」
 5年生「森」
 6年生「自由」(人工物を取り入れる) 

  初めて写生会に参加する1年生は、実際に様々な自然に触れる中で、心動かされたことを思い思いに表現できるよう、描くモチーフを自由に選べる「はるのしょくぶつえん」にしています。
 2年生では、色とりどりの花々に目を向け、色彩豊かに描く楽しさを味わえるよう、「花と○○」としています。
 3年生生になると、木を取り入れ、描く対象物を大きくすることで、目の前のものから全体へと視野を広げ、より大きく世界を捉えることができるよう「木と○○」にしています。
 4年生では、自分が描きたいと思う一本の「樹」を選ぶことで描く対象を絞り、その対象とより深く向き合って描く喜びを味わえるよう「私の樹」としています。
 5年生では、テーマを「森」とし、木々の重なりを描くことで、平面上で空間や遠近を表現することに挑戦します。
 6年生では、テーマは自由としていますが、立体的な表現に興味を持つこの時期、人工物を画面に取り入れるよう指導しています。

 


●作画過程の指導について

   当日は、現地で4~5時間ほどかけて、4つ切りサイズの画用紙に下書きをし、着彩します。その後、図工の授業で、じっくりと時間をかけて絵の仕上げに取り組みます。   低学年で2~4時間ほど、中高学年では6時間前後の時間をかけて仕上げます。当然ながら、完成までの時間は、一人ひとり違います。授業時間内だけでなく、始業前やリフレッシュタイム(中間休み)、放課後などの時間に図工室へ通い、仕上げに取り組む児童もいます。

 
 子ども達がこれだけの時間をかけて一枚の作品と向き合うには、かなりの根気と集中力、そして表現力が必要です。子ども達が作品と対話を楽しみ、最後まで粘り強く取り組むことが出来るよう、教師は一人ひとりの特性に留意し、個々にアドバイスや声かけすることを大切にしています。  また、授業では、子ども達が納得のいく作品ができるよう、発達段階に応じた絵の具の混色・重色・濃淡、絵筆の使い方、遠近や立体の捉え方など、基礎・基本的な技術指導を行います。その際、単に技術的な方法として知識を教え込むのではなく、実際に自分の手を動かし、自らの感覚を働かせることで、体験を通して獲得できるよう導くことが大切です。この過程が、作品の方向性を探り、自分なりの表現を導き出し、創意工夫する事の面白さを感じることに繋がります。また同時に、それぞれの感性を磨く大切な機会でもあると考えています。

 


●写生展について

 完成した作品は、7月に行われる校内写生展で発表します。教室前の廊下やNDホールに全校児童の作品を展示します。
 写生展の会期中には、作品鑑賞を行います。自分の作品や友達の作品を鑑賞する中で、表し方の違いや人間の持つ表現力の素晴らしさを感じ取り、一人ひとりの見方を深めます。


 

―3年生児童の写生展感想より― 

・○○さんの作品は、木に光があたっていて、木がひかっているみたいで、心がなんだかやさしい心になりました。
・○○さんの絵は、木や木の葉が風でふかれているようで、気持ちよくてすずしく感じました。心がはれたようになってきます。
・1年生から6年生までとても自分らしさがでていてすごいなあと思いました。人をかいている人、空を灰色にした人、いろいろなくふうがあっておもしろいです。
・おもいきりかいた絵や考えながらかいた絵、どれもせかいに1つしかない作品でした。1年生の作品は1年生らしい作品で、見るとだんだん楽しくなってきます。
・(○○さんの絵は)私と一緒のところでかいたけれど、ぜんぜんちがう絵だったのでおもしろかったです。
・見ている人がじっさいの様子をそうぞうできるような絵をかきたいです。でもなぜか知らないけれど、写真のような絵は私はそんなに好きじゃないから本物そっくりにはちょびっとだけかきたくないです。 


 作品の鑑賞を通して、一人ひとりの感じ方が違えば、表現も異なり、それぞれのよさがあるということを実感できる時間となればと願っています。 

 

《NDトピックス》 

 本校の写生展では、各クラスから1・2年生は7作品、3~6年生は9作品を選抜し、NDホールに展示しています。また、NDホールに展示された作品の中から、各クラスより1点を選抜し、クラス賞(メリーポーロ賞・メリーユージニア賞・リチャーダン賞・ヴィヴィエン賞―本校の創立時の4人のシスター名)として表彰しています。さらにクラス賞の中から、各学年より1点を選抜し、学年賞(マザーテレジア賞―ノートルダム教育修道女会創立者)として表彰します。

 本来、子ども達の作品に優劣を付ける事は、躊躇われる要素があります。児童の励みに繋がることを願い、可能な限り様々な教員の意見と児童の日常生活、取り組む姿勢も考慮し、子ども一人ひとりの感性が素直な形でにじみ出ている作品を図工科で選抜しています。