アンネゲルト・フックスフーバー 作 池田 香代子 訳 の絵本『カーリンヒェンのおうちはどこ?』(一声社)という難民の子どものことを描いた絵本を読みました。わたしは,『難民』ということばは,もちろん聞いたことがあります。しかし,現状は映像を通して見たことはありますが,普段そういう人たちと間近に接していません。自分の日常の外の世界におられると思い,どこかに置き忘れているようです。今回この絵本を読んでいて,1992年8月に14日間滞在したフィリピンでの体験を思い出しました。
 フィリピンのルソン島西側にあるピナトゥボ山が噴火した翌年,大学のシスターの誘いで集落や田畑が埋まった山岳民族を訪ねて,寝食を共にし,話を聞かせていただいたときのことです。その時火山の噴火で,火砕流と火山灰,火山泥流が発生し,谷が埋まり難民になってしまった村民アエタ族の存在を知りました。また,ストリートチルドレンセンターや,スモーキーマウンテンで出会った多くの子どもたちの記憶もよみがえってきました。
 この本に出てくる『石食い族』や『しっぽ鳥のくに』で難民の子どもは,みんなと違うから好きになれない,助けてあげないと言いました。また,『霧ガラスのくに』では,ついつい自分たちの価値観を押し付けてしまい,うまく助けられませんでした。『人のくに』では,お金があるのに助けてくれません。『貧しい人たち』も,自分たちの分が減るから何も分け与えてくれませんでした。わたしは,がっかりすると同時に「これがわたしたち人間の醜い姿なのだな。」と思いました。
 唯一『大きな木の上に住むやさしい人』だけが,助けてくれました。
彼は,自分のことを『おばかさん』と言っていましたが,心優しい人ですべてを難民の子どもに分け与えてくれました。わたしが,普段忘れかけていることを教えてくれました。
 ノートルダム学院小学校に学ぶ子どもたちが,『大きな木の上に住むやさしい人』のように育ってほしいです。

3年副担任 司書教諭
中塚 博之