ノートルダムに入学すると海で40分以上泳ぐ力がつく理由

「うちの子は水泳が苦手で・・・水が怖い子でも遠泳合宿に行けるんでしょうか?」
と、本校志願者や在校生の保護者の方によく聞かれることがあります。
このような質問をたくさんいただいていますので、本校の水泳学習についてお伝えできればと思います。

まず、皆さんは本校の水泳学習の内容についてご存知でしょうか?
本校では5年生で遠泳合宿を行い、遠浅の海で40分~1時間程度泳ぎ続けます。 
もちろん、全員が参加する行事です。入学時には泳げる子も泳げない子もいますが。

泳ぎが苦手、水に対して怖いという思いを持っている子がどのようにして遠泳合宿に向けて泳げるようになるのか。

以前このような子がいました。

水への恐怖心を乗り越え、完泳したAくん

2年生のAくん。
水は大の苦手。水に顔をつけブクブクをすることもできず、手ですくった水を顔にかけるのが精一杯。
初めての水泳学習ではプールサイドで水に怯えながらただ時間が過ぎました。
授業が終わり、「やっぱり怖かった?」と聞くと「うん」とうなずくAくん。
「5年生になるまでAくんはどうしたい?」と聞くと思いもしない反応が返ってきました。
「みんなと一緒に泳ぎたい!」言葉をしぼり出すように答え、目にはうっすら涙を浮かべていました。

その日からAくんはどんどん成長していきます。
次の水泳学習ではプールに顔をつけることができるようになり、初めて水泳学習で笑顔を見ることができました。2年生が終わる頃には頭のてっぺんを水の中に入れることができ、「やった!できた!」と嬉しさで、くしゃくしゃになった笑顔は忘れられません。
3年、4年、5年と水に対する恐怖心もなくなりどんどん上達し、周りの友達も驚くほどでした。遠泳合宿が始まる直前の休みの日には、「お父さん!プールに連れてって。練習したいから。」とお願いして練習するほど「上達したい」という思いを持って取り組んでいました。遠泳本番はもちろん完泳。それも学年の中でも一番長い距離を泳ぐグループで泳ぎ切り、達成感に満ちた表情をしていました。

はじめは苦手な児童でもこのような経験をしている児童がたくさんいます。

顔もつけることが難しい子どもたちはどのようにして泳げるようになるのでしょう。私たちが普段から行っていることや、ノートルダムならではの特徴をお伝えいたします。

 

秘密その1  床が動くプールが恐怖心をなくす

本校のプールは0cmから155cmまで床が動きます。
これは全国でも珍しい施設で、可動床式プールは子どもたちの上達に非常に大きいものがあります。

なぜ床が動くことが良いのか? 皆さん海を想像してください。

膝に波が当たるくらいの深さと、つま先立ちをしてあごを上げなければ呼吸できない深さで遊ぶのはどちらが安心でしょうか?
もちろん浅い方が安心ですよね! こけてもすぐに立ち上がれますし、浅かったら「思いっきり飛び込んでも大丈夫!」とさえ思ってしまいます。

深ければ泳げる人でも少しドキドキするもので、深さと安心感は大きくつながっています。
私たち大人、子ども関わらず「安全だ!安心だ!」という環境があって初めて「やってみよう」とチャレンジしたいと思うものです。 その安心感を作っていくのがこのプールなのです。

学年によっても深さを変えられますし、1時間の授業の中でも水深を変え、様々な運動や遊びを行うことが可能です。
それによって学年や児童の力に合わせて少しずつレベルをあげていくことができます。 

秘密その2  低学年の水泳の授業は遊び?!

水が怖ければ泳ぐことができませんし、浮くこともできません。
だから私たちがまず行わなければいけないのが
水は怖くない・おもしろい・楽しいという思いを持たせることです。

水で遊ぶ楽しさを体感してもらうために 30cmの水深で走ったり、両足ジャンプをしたり、後ろ向きに走ったり、ワニ(足を浮かせて手だけですすむ)などを行います。 これを行うことで自然と水に顔をつけられるようになり、足を浮かせるようになります。
他にも、シャワーのように上から水をまき、トンネルのようにして遊んだり、宝物探しをしたり、すべり台を使って水にすべりこんだりします。 子どもたちにとっては遊びの感覚が強いですが、知らないうちに水に対する恐怖心が少なくなり、泳ぐハードルがとても低くなります。
中学年からは水遊びを行いながら、平泳ぎの基礎を学び、高学年(5年)になれば隊列泳ぎを行っています。
得意な児童は長時間泳ぐことを目標に、苦手な児童はその子に応じた距離や目標を決めて行います。
グループごとに練習を行うのでみんなで励まし合って「一緒に完泳しようね!」と声をかけて練習に取り組んでいます。

もしものことが起こった時に「1分泳げるのか」「1時間泳げるのか」で命を守る可能性が大きく変わります。本校の水泳学習を通してで自分の命を守る力をつけさせたいと考えています。

岩城 賢三