今年は一年生の宗教を担当しています。子どもたちのあまりの純粋さに戸惑うことの多いこの頃です。ある時、宗教の時間に「天使」についての話をしました。
 “イエスさまがお生まれになることを告げた天使は・・”
  と言いかけると、何人かの子どもたちが、
 “シッテル~、ダイテンシガブリエル!”
  と大きな声で答えてくれるのです。きっとキリスト教系の幼稚園か保育園からの子どもたちなのでしょう。そのあと、マリアさまの役をしたとか、ヨゼフになったとか、天使になったとか、子どもたちのにぎやかな声が聖堂に満ち、クリスマスを迎える頃のような楽しい雰囲気になりました。それは園長先生方にお見せしたいような光景でした。でも天使のことなど初めて聞く子どもたちも多くいたのです。
 その日は守護の天使について話すことになっていたのです。天使はマリアさまやヨゼフさまなど特別な方にだけ神様から遣わされるのではなく、みんなにも、しかも、一人ずつに天使が遣わされていることを話しました。みんなはその話がとても新鮮だったらしく、し~んとして真剣に聞いてくれたのです。そしていつもみんなの体の右の肩のところに立っていて下さり、どこに行く時も見守ってくださることや、友達と話したり遊んだりしている時もいつも一緒にいて下さることや怖いことから守って下さることなどについて話しました。もちろんいろいろな質問が出ました。
  “なんで 天使は見えないの?”とか、
  “僕が寝るときは一緒に ねはるの?” など・・。
その子は少し困ったような顔をしていました。きっと、天使がベッドから落ちたらどうしよう、とでも心配していたのではないでしょうか。とにかく、悪いことや友だちのいやがることをしないようにと天使がいつもみんなに小さな声で話しておられるので、よく聴かないと聴きとれないのです、と言っておきました。そして毎晩寝る前には特に、守護の天使に祈るようにと言いました。

 さて翌日、西ロッカー室の前に立っていると、一年生がやってきました。
 “シスター、パパやママにも守護の天使はいるの?”
 そこまではまだ良かったのですが、
 “守護の天使はどうして右側の肩なの?  左は悪魔なの?”  一瞬答えに窮しました。しかも続けて聞くのです。
 “左利きの人は左側なの?”と。この子は一日中考えていたのでしょうか。

 その子と一緒に教室の方に向かって歩きながら、子どもとの出会いをこの上なく尊く思えたひとときでした。


 守護の天使よ 夏休み中も子どもたちをあらゆる危険や誘惑からお守りください。

 

シスターベアトリス田中範子


聖堂に飾られている守護の天使の絵