6 年生の音楽の授業では、毎回、楽曲を聴く時間を設けています。一般的に、音楽の時間というと、歌唱や器楽演奏といった活動に力点が置かれるようなイメージがあるかもしれません。しかしながら、聴く力を養うことも、それらと同等に、もしくはそれら以上に大切なことであると考えています。それは、聴くという行為が、すべての音楽活動の根源であるとともに、他者理解への大切な一歩でもあると考えられるからです。

 

子どもたちが聴く楽曲は、必ずしも彼らがよく知っている曲ではありません。また、一度聴いただけで面白いと感じる曲ばかりでもありません。しかしながら、それらはどれも人々によって大切に受け継がれてきた、説得力のある楽曲です。こういった曲に、子どもたちは、好きであろうが嫌いであろうが、毎回向き合っていきます。はじめの頃は、曲が終わるまで集中していることが難しい子どもも見られましたが、今ではそのような子どもたちも、時間の過ごし方を心得るようになり、楽曲の流れに身を委ねることもしばしばです。

 

聴くという行為を切り分けて考えれば、次のように考えることができるのではないでしょうか。

 

音楽に心を開き  

音楽と対話し

音楽に共感する

 

私は、このステップが、他者(自分の外の世界)との関わり方にも通ずるものであると考えています。子どもたちが、聴くという経験を積み重ねることによって、これからの人生で出会う未経験・未理解の他者への眼差しを澄んだものとすることができるよう、ともに少しずつ歩みたいと思います。

 

波々伯部宏彦