月・水・金曜日は東ロッカールームに、火・木曜日は西ロッカールームに立って子どもたちに朝の挨拶をしている私ですが、何もロッカールームの前で真っ直ぐに立って子どもを迎え、近づいて来ると頭を下げて挨拶をしている、という訳ではありません。大体は校舎前の落ち葉の掃除をしています。そうすると、子どもたちの世界がよく見えるのです。

    “私も掃きたい”  “わたしも・・”  “ぼくも・・”

 いつの間にか、自分たちで箒やちりとりを持って来て、一緒に掃き出すのです。この頃は箒の使い方も上手になり、枯葉をかき集めて小さな山をいくつも作り、その後ちりとりで集めて白い大きなビニール袋に入れるのです。これは一人では出来ません。小さな自分たちよりも大きなごみ袋ですから・・。誰かがごみ袋の端をもってごみを入れやすいようにしなければなりません。指図をしなくても、そういう難しいことが出来るようになります。子どもたちはもともと仕事が好きなのでしょう、と言うよりも体を動かすことが得意なのでしょう。

 ここまで話しますと模範生のように思えますが、最後まで聞いて下さい。やっぱり子どもは子どもです。誰かが落ち葉の中からダンゴムシを見つけたのです。さあ、大変! 掃除どころではありません。子どもたちは箒をその場に置いて、ダンゴムシの世界に夢中になりました。
     “あっ、白いのと黒いのがある~ ”  “ほんとっ ? ”  “うわっ!すごい”

 せっかく掃き集めた落ち葉はダンゴムシの住みかだったらしく、すっかりもとのように否、それ以上に散らかってしまいました。そこへやってきたのがランドセルを背負ったままの1年生の男の子。かれはアリの行列を見つけたのです。 さあ大変!  みんなはダンゴムシからアリに関心が移りました。遂に、アリの住みかも見つけたのです。
 みんなはじっとアリがその穴に入るかどうかを見ています。どうやらアリは子どもたちが見ているのに気づいたらしく、用心して穴に入らないのです。子どもたちはじっと穴を眺めています。そこでチャイムが鳴りました。誰も穴をつぶしたり、アリの行列を足で踏んだりはしませんでした。
 朝の短い感動的な場面でした。

シスターベアトリス田中範子