かわいい子には旅をさせよ。
ノートルダム教育がめざすオンリーワンとナンバーワン。

 京都の教育事情はこれまでと一変し、小学校から大学に至るまで生き残りを賭けた凄まじい競争のなかに否が応でもその身を置くことになりました。それぞれの学校の特色をアピールし、学力重視のナンバーワンの教育ではなく、子どもの個性を尊重したオンリーワンの教育を、と叫ばれるようになりました。
 私はあらためて創立から50年余にわたるノートルダム教育を振り返りながら、小さな子どもたちに一番必要なことは何かと考えてみました。創立以来今日まで、各時代のニーズに応える教育をしてきたように思えます。勉強の好きな子どもはさらに好きになるように、スポーツや美術の好きな子どもには、少し高度に感じるハードルを与え、チャンレンジさせてきました。つまり、ナンバーワンの教育とオンリーワンの教育の両方を実現してきたように思います。これからも、ノートルダムはナンバーワンとオンリーワンの両面で優れた学校でありたく懇願しています。
 児童数1000人もの小学校で、全体の秩序を保つためにも厳しいしつけを要求してきました。私は、子どもの自主性・自立心を養うためには、小学校時代は”自由でのびのび”教育よりも、むしろ”型にはめた”教育の必要性を感じるこの頃です。その一つとして、礼法や各学年の茶道は日本の伝統的な型の中で一期一会を学ぶ大切なひとときでもあります。
 子どもたちの将来を考える時、小学校でこそ人間としての最も基本的な約束事(社会性)を身につけさせ、”よくものを考え、判断し、正しいことを実行することができる”6年生として卒業させたいと考えています。そのためには、詰め込みの勉強も必要でしょうし、時にはいやなことも我慢しなければならないでしょう。ただ、日常生活の中では殆どその必要性がありません。冷房も暖房も我慢して加減する、ということはなかなか難しいものです。
 かわいい子には旅をさせよ、と諺にもあります。子どもの将来を考えるなら、幼い時代にこそつらくて苦しい経験をあえてさせる必要もあるかと思うのです。昔は今日のように便利な時代ではありません。旅をすることは、どれ程不便で危険に満ちていたことでしょう。それでも親はあえて子どもに苦労の多い道を歩ませ、頼もしい人間に成長することを助けたのです。自分で判断し自分で責任をとることの出来る人間に成長するのを助けるのが、わたしたち大人の責任ではないでしょうか。