第53回 卒業式」における学校長式辞を掲載いたします。

 

第53回 卒業式

 

      学校長式辞


 

 ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様、お子様のご卒業おめでとうございます。また司教様をはじめご来賓の皆様、今日は巣立って参りますこの子どもたちのための祈りの式にお出でくださいまして、ありがとうございます。保護者の皆様、お子様が6年生の上級生に手を引かれてこのNDホールに入って来るあの入学式から早、6年の歳月が流れました。その間、学校の様々な行事や催しに、ご理解とご協力を賜りましたことをあらためてお礼申し上げます。
 今日小学校を巣立って行く皆さん、あなたたちのためにご両親がこのノートルダム学院小学校を選んで下さったそのおかげでどれだけ沢山の出会いを経験したことでしょう。みなさんは様々な行事を通して、心と体と頭を磨き、鍛えてきました。まずはご両親やご家族の皆様に、そして先生たちにまた、クラスや学年を超えた仲間に、またあなたの気がつかないところであなたのために祈り、世話をしてくださった方々に感謝を表さないといけませんね。
 感謝を表すというとドナルド・キーンという人の言葉を思い出します。この方は日本が好きで一年のうち半分くらいは日本においでになるそうですが、日本の文学について専門的に勉強されて、そして日本人以上に日本のことを愛するということでご自身とても誇りに思っていらっしゃるアメリカの学者です。つい最近日本国籍をとられたといことで今話題の人ではないでしょうか。このドナルド・キーンさんは東日本大震災で多くの外国の方々が帰国を余儀なくされている現実の中にあって、大好きな日本に感謝の気持ちを表すために日本人になりたい、日本人として死にたいとまでおっしゃって、つい数日前に日本の国籍をとられました。こんな感謝の表し方があるのですね。心動かされるニュースでした。

 この「行動で表す」という点では、皆さんお世話になったノートルダム学院小学校の先生方も同じです。被災地に行って何か行動を起こさなければならないという思いで帰って来られ、皆さんに現地の様子を映像を通して、また買って来た品物を通して、またご自身お感じになったことを分かち合ってくださいました。防災センターに最後まで残って津波が来たことを知らせておられたアナウンサーは、早く逃げるようにと何度も何度も繰り返しマイクで呼びかけ、そしてご自身は波に呑まれてしまわれたという、骨組みだけになってしまったその建物の前で現地に行った先生方と一緒に頭を下げて祈りました。

 この方々のほかに、大震災一年目を迎えたこの頃になって、たくさんの方々がほかの方々を助けるために命を落とされたという事実がわかってきました。山の方に逃げるよりもむしろ海の近くの住民方に避難を呼びかけに行って、また周りの人に手を差し伸べたりしている間にご自身は波に呑まれてしまわれたというケースがどれほど多くあったことでしょうか。神様だけがご存じのことです。先生方はただ行って自分の感想を子どもたちに伝えるだけではなく、ご自身、春休みにもっと多くの人数でボランティアに行こうではないかと今呼びかけて、その計画をしておられます。今年の児童会の執行部の子どもたちも昨日の朝まで被災者の方のためにと門に立って募金活動をしてくれました。今日は5年生が早速6年生の後を受けて、門に立って、来てくださる方々に呼びかけていました。このように行動に表すことが大切なことなのです。皆さんはこの学校でそういったことを学びました。

 私たちが南三陸に行った時にも感動的なことがありました。訪問した老人施設では津波がほとんど天井のところまできて、たくさんのご病人方は波にさらわれたのですが、その老人施設に最初に助けに来たのは、近くの学校の中学生だったということなのです。中学生ひとりひとりがお年寄りをおんぶして山の方につれて逃げたということです。それらの人々だけが助かったという話を聞いて、今の時代に自分のことよりも、自分の身の危険よりも、周りの人のことを心配できる、そんな中学生がいるのだということに本当に驚きとともに感動を覚えました。ちょうどその話を聞いている最中に私達の横をその学校の中学生たちが元気よくあいさつして、山の方に向かって行きました。先生たちも思わず彼らの後ろ姿に頭を下げてありがとうという気持ちを表しました。その中学生たちはどれほどショックを受け、悲しみに沈んでいるその土地の人に大きな希望をもたらしてくれたことでしょうか。
 私たちも今ノートルダムのオリジナル被災地支援ソング「つながる未来」を歌っています。
“あきらめないで、ゆっくり歩いていこう、僕らがついているから、いつもあなたを思っているから、ずっとあなたを思っていくから・・・” そんな歌詞でしたね。

 数日前の日曜日には、ちょうど一周年を祈念して高野教会で追悼のつどいのチャリティーコンサートがありました。ノートルダム学院小学校から私たちを代表して合唱部とオーケストラのメンバーが出演してくださり、彼らの透き通るような美しい声と心からしてくださる演奏でそこにいる方々を感動させてくださいました。そして教会にいらっしゃるすべての方々と一緒に熱い祈りを唱えました。ちょうどリアルタイムで画面がセッティングされていましたので、それはそのまま現地に届いたのではないでしょうか。
 今、卒業していくみなさんに贈ります。これからの日本は行動を通して、このように周りの人々に感動を伝えていくエネルギー、そういったものを持ち合わせる子どもたちによって作られていくのではないかと思うのです。あなたたちは心のエネルギーを、この学校で習った「祈り、よく考え、持っている力を使って人に仕えよう」― その心をもって、日本の、世界のために羽ばたいていってください。そして、どこに行っても、 私たちがいつまでもみなさんを見守っていることを忘れないでください。

神様があなたの前途に祝福をくださるように、これから司教様とともに祈りましょう。前途に祝福がありますように。ご卒業おめでとう。

(2012年3月15日)