世界一の体験           

 

11 1 日の古典の日にちなんで、 5 年生ではこの日の国語の時間、古典の作品に大いに親しみました。幼い頃から誰もが聞いたことがある竹取物語なども、長編の原文に近いものに触れた機会は少なかったようで、物語に沿って十八節の話を取り上げると初めて聞くような様子で聞き入っていました。天で犯した姫の罪が許されて帰天すると天女が告げる場面や帝が姫からもらった不老不死の薬を手紙と共に富士山の山頂で燃やすように命じる場面などには子どもたちの関心が特に高かったです。

「古典の日」にちなんで私も久しぶりに『枕草子』を手に取りました。何度読んでも新鮮な感動があり心惹かれる作品なのですが、今回は二百六十七段の「もっともつらいこと、うれしいこと」の段が心に残りました。この段では「人の世に生きていく上で何と言っても大変つらく悲しいことは身近な人から憎まれること。」と記されています。本当にそうですね、身近な人たちとは誰もが愛し愛されたいと願うものですから。子どもを一人設けている清少納言は親子の気持ちにも触れています。「子どもというのは親に愛されてこそ生きる安心を与えられ、自分に自信がつく、そうなってこそ努力を覚えて世間にも認められる、そして立派な人間へと成長できる。」と記されています。今も昔も、「親から愛されること」こそが子どもにとって世界で一番素晴らしい体験なのですね。自分は愛されている、守られているという実感こそが最高の喜び、信頼している相手からの「愛されている」という実感、これ以上の宝物はないということを教えてもらいました。時代を超えた普遍的な人のありように、しみじみとした感動を覚えた秋の日でした。                              

5年担任 稲光千賀子