国語部研究テーマ

『感じる心・考える力』をはぐくむ
~主体的に学び、豊かに表現する児童の育成~

 

<4年生 国語科の取り組み>

国語部 4年生担当 沼田 遼

 4年生の国語科では、年間を通して「自分の考えを持ち、話し合う」ことに重点を置き学習してきました。その取り組みを紹介します。

 授業は、まず音読を中心とした読みを行い、そして感想を書くことから始まります。
感想は十人十色で、どの子も感じ方が違います。読書には正しい読みというものはありません。子ども達それぞれの読み、感じ方を大切にしています。

次に、その感想から出てきた疑問等を中心に子ども達に問いかけます。


例「ファンタジーの入り口はどこだと思う?」 (白いぼうし より)
 「この話はハッピーエンド?バッドエンド?」 (ごんぎつね より)


問いに対して、子ども達は自分の考えをノートに書きます。(個人内対話)
書き終わった子は自然と近くの友達と考えの交流をしています。(ペア対話)

 自分の考えがなければ話せません。考えがなければ、比較検討が出来ないため話し合いが楽しくありません。話し合いのために、まず書くことを通して自分の考えを練り上げます。次いでペア対話。全体の話し合いでは1人あたりの発言回数が限られてしまいますので、このペア対話により全員の話す機会を確保します。また、話すことは自分の考えがよりまとまるという効果も期待できます。

 そして、全員で話し合いです。(全体対話)
 「○○という問いに対して、みんなで話し合いをしましょう。」

司会、書記は子どもが行います。子ども達は以下のハンドサインを使います。

 このハンドサインを使うと、一人一人何を言いたいのかが分かります。司会をする子が話し合いを進める際に有効なのです。新たな意見の後に付け足しや賛成を指名し、意見の強化をしたり、1つのことについて深まっている時に、あえて新たな意見を指名せず、流れを変えないということも可能です。また、司会が困っている時に、司会へというハンドサインも設定しています。司会に任せるのではなく、フロアの子も場の流れを考え、司会を助けることが出来ます。助けてもらえるので、皆どんどん司会に挑戦していきます。
この話し合いを繰り返すことで、誰でも司会、書記の役割を務められるようになってきました。

 私の授業では、

①「主人公の特徴について話し合おう。」といったオープンエンド型
②「AかBのどちらか。」といったディベート型
の2つを話し合いで行います。
①は皆で広げ、深めていくイメージです。
②は教科書の本文を基に、論破せよと言っています。

①では「おぉーなるほど!」「たしかに!気付かなかった」等の新たな気付きがあり、
温かい感じの話し合いになるのに対して、
②では、まさに真剣勝負!
自分達のグループが負けたくないと必死です。子ども達は②の話し合いが好きみたいです。夢中になり、頭をフル回転させて論で勝負するという楽しさを感じています。

子ども達は、学習を重ねるごとに本文に基づいて話せるようになってきました。

◎学びを活かして

 後期では、この話し合いが出来るようになってきた子ども達に、班の中で物語の疑問を考え、根拠を基にプレゼンテーションしようという学習を設定しました。
話し合いを重ねている子ども達ですから、この課題は容易です。
各班、議論を重ねました。

 

 この学習では、根拠を基に、自分達の考えを伝えることに重きを置きました。声はもちろん、資料の活用、書画カメラ(OHC)も使用します。
 この授業の1つ前に『アップとルーズで伝える』という教材を学びました。ここで学んだことを活かし、資料をズームにするか、ワイドで見せるか、自らの判断で行うことが出来ています。既習事項を活かしながらの学習は、学習の効果をより強め、成長できていると子ども達が実感出来る素晴らしい機会です。

 『プラタナスの木』という物語文についてプレゼンテーションをしました。
各班、疑問⇒考え⇒根拠⇒まとめ という流れで図式化したものをテレビ画面に写し、補足説明しながら発表しました。

 
 

以上のような学習を4年生で行ってきました。この1年で学んだことを活かし、高学年では、よりレベルの高い話し合い活動が展開されていくでしょう。
子ども達が主体的に学習していけるよう、話し合い活動を今後も続けていきます。

 

<2年生 国語科の取り組み>

国語部 2年生担当 本木 千紗子

 今年度、重点としたことは、子どもたちが、話し合いにしっかりと取り組み、友達に意見を認めてもらう心地よさを味わいながら、発表することに自信をつけることでした。そして、自分の意見や友達の意見の同じところ、ちがうところを意識して話し合うことで、新しい発見や、考えが深まっていく楽しさを子どもたちに感じ取ってもらえたらと考えました。

 春は『ふきのとう』で、人物の気持ちを想像し、どのように音読したらよいかを考えながら、工夫して音読することをチームで楽しみました。

 秋の『お手紙』の学習では、子どもたちに物語の中で不思議に思うことを書きだしてもらい、その中で、こちらが話し合う価値があると感じたものを「謎」として、学習課題に設定し、話し合うことに挑戦しました。
「謎」とは、たとえば、「がまくんは、かえるくんにお手紙を書いたことを(途中までサプライズにして喜ばそうと秘密にしていたのに)どうして話してしまったのだろう。」といったものです。この「謎」が子どもたちの考えるスイッチを押します。子どもたちは、話し合うためにも、自分の意見を一生懸命書きます。書いてから、ペアで交流し、全体で発表するという流れも経験しました。
物語に書かれている描写や会話のひとつひとつに注目しながら、物語を真剣に読み解こうとする子どもたち、自分の意見を一生懸命仲間に伝える子どもたちや、また仲間の意見を聞いて、「そうか」と自分の意見をより深める子どもたちの姿や様子がみられました。

 また冬には『スーホの白い馬』で、それぞれの場面で心に残ったことについて感想を書き、交流する学習をしました。ここまで、意見を書くときに、なかなか自分の意見が思い浮かばない、書けない子がいました。なんとかその子たちが自分の力で書けるようになってほしいという願いを持って学習をすすめたいと考えました。そこで、奈良学園大学教授の鎌田 首治朗先生に助言いただき、教師が作った感想のお手本をポイント化(お手本を書くためのコツを子どもたちがわかる言葉で短くまとめる)し、手順を追って感想を書く練習をしていくことをアドバイスいただき、実践しました。ここでの感想のポイントは「心にのこったこと」「そのわけ」「ひとこと」という3点にし、1場面では、教師が「心にのこったこと」を選んで、例文も見せ、少しずつ自分で書く量を増やしていくという、段階を踏んで学習をすすめていきました。その結果、これまで「何を書けばいいのかわからない」と言っていた子たちが、まず、本文をみて、心にのこったところを選ぶ、そして、その理由を書く、という手順をよく理解し、驚くほどよく書けるようになりました。「これまで書くのが苦手だったけど書けるようになった」「書くのが楽しくなってきた」という感想もきかれるまでになりました。
 もちろん、この学習でも、話し合いにも重点を置いて、学習を進めました。話し合いでは、『お手紙』の時のように、自分で感想を書き(一人学び)、小グループで意見交換(ペア学び)そして、全体での交流(みんな学び)という学習の流れを理解し、小グループで話し合っているときに、自分の感想に自信を持ったり、感想のわかりにくいところを修正したりする様子もみられるようになりました。

みんな学びでは、それぞれの感想を聞いて気づいたことを最後に交流し、「私と同じところを選んでいるのに、ちがった理由だった」「ぼくがそこにしようかと悩んでいたところを、上手に言ってくれてスッキリした」「私が考えもしなかったことに気づいていて、本文をよく読んでわけを書いているんだなぁと驚かされた」などの学びを得ることができました。
また、『スーホの白い馬』の作品全体を通して貫かれているスーホと白馬の心の結びつきに注目し、さらに、それぞれの子どもが自分の考えたことを仲間に伝える表現を豊かにするために、「ゆうき」「しんらい」「心をこめて」「兄弟みたいな」「愛している」などのそれぞれの授業でいいなと思った言葉を『ことばの宝箱』として書きためて掲示していきました。授業中に、その言葉が自分の気持ちにぴったりくると感じて、使ってみる子が増え、さらに上手に気持ちを表現できたり、「今日の授業で新しい言葉が見つかったね」と『ことばの宝箱』に残せそうな言葉を意識して話し合いをする子がでてきたりもするようになりました。
 学習の最後には、世界の民話の感想を書くという学習に取り組みました。多読につなげたかったので、図書室で世界の民話の本を用意いただき、早いうちから教室に60冊ほどの本を用意しました。子どもたちは、朝読書等に本を読むことを楽しんでいました。また、感想のポイントを理解していたので、自分が選んだお気に入りの一冊の本の感想を意欲的に書くことができました。


 この一年で、子どもたちは国語科の学習を通して、感じたことや意見を書きまとめることが少しずつ上手になり、話し合いに意欲的に挑戦できるようになっていると感じています。また、よい話し合いができたなという手ごたえがあったり、意見の中に子どもの成長を感じた授業の後、子どもたちは「今日の国語面白かったわ」「なんか国語が好きになってきた」と嬉しそうにしていたり、「さっきの話なんやけど、考えたらもっと気づいたことがあるねん」とまだ話し合いの続きをしたくて教師に話しかけてくる子もいます。話し合いは、子どもたちの思考を活発にし、達成感をもたらします。これからも子どもたちに国語力を養っていくとともに、「国語が好き、楽しい」という気持ちを育てていきたいと思っています。

 

 

<1年生 国語科の取り組み>

国語部 1年生担当 鎌田 裕子

 昨年度は60周年記念授業研究発表会で研究授業を行い、自分の考えをもつことで聴く力が高まるのではないかと考え研究をしてきました。また、鎌田首治朗先生の「小学校・国語科読むこと単元計画作成チェックリスト」の学習を通して国語科における単元計画づくり、授業づくり、教材研究の在り方を研究してきました。
さらに小研として今年度は、11月27日(金)『ずうっと、ずっと、大すきだよ』を公開しました。

◎研究課題について

 R1の子どもたちは、入学以来、『おおきなかぶ』『くじらぐも』などの物語文を学習してきています。その中で、自分がおもしろいと感じたことや不思議に思ったことなどを簡単な文章に書いたり、そのことについて話し合ったりする学習を積み重ねています。また、スピーチでは自分の思いについて進んで発表したり友だちの発表を聞きながら自然に尋ねたりする姿が見られるようになってきました。このように子どもたちが友だちとの対話を通して主体的に物語を読み自分の世界を広げる学習を重ね、想像豊かに読み読むことの楽しさを実感していくことは、進んで読書しようとする子どもたちの態度を養うことにつながっていくと考えています。
 今年度小研をしてみて初めて『ずうっと、ずっと、大すきだよ』は1年生の児童にとって難しい内容だと思う自分がいました。それは、読むことにおける読みの体験の重要性を今年度の学習をとおして自分が実感できたからです。これまで当たり前のように「『ずうっと、ずっと、大すきだよ』は子どもたちが感動する。」と単純にとらえていた自分のものの見方を自分自身で問い直したのでしょう。
 子どもたちは実際には『ずうっと、ずっと、大すきだよ』のお話に心を動かされます。しかし、その動かされ方は実際に大切な愛犬・愛猫を亡くしたりする体験から読んでいる子もいれば、カブトムシや幼虫を亡くした体験を基に読んでいる子もいます。そして、TVで見た間接体験で読んでいる子もいれば、ゲームのキャラクターが死んだことを基にしている子もいるかもしれません。そこには、子どもたちの想像力の偉大さと危うさもあります。それを支える教師の児童理解の大切さがあるのです。
 指導では、自分なりの「読むこと」の世界を主体的に広げていこうとするためには、一人ひとりが「ぼく」の気持ちを表す叙述についての感想や疑問を持ち、そこから出た学習課題に自分なりの意見を書き、読みを深めたり、友だちの意見を聴き、自分の意見との違いに気づき尋ねることによって読みを豊かにできるよう取り組みました。

◎今年研究課題に取り組んで

・「小学校・国語科読むこと単元計画作成チェックリスト」で単元計画作成のあり方を学ぶようになって、単元とその構造の重要性を一層深く認識でき、普段の1回1回の授業レベルにもこだわりを持つようになりました。(教師側)
・子どもたちの中の互いに話したり聞いたりする姿が変わってきています。言語活動ができるようになると子どもたちは急に学習に自信を感じ、前向きに学習に取り組みます。積極的な発表が増え、発表することを苦手としていた子どもも、友だちとの交流に、参加するようになりました。
・一人学び、交流、みんな学び、自分学びの成果として子どもたちがより主体的、能動的に授業に臨むようになりました。
・みんなの前で自分の考えをわかりやすく伝えたり、つなげて発表したりしようとする子どもが増えてきている。しかし、クラス全体が友だちの意見を聴いて自分の考えをさらに深めたり、豊かにしたりするところまでには至っていません。このことについては、個人差があり、より長い時間のスパンの中で、学習を繰り返し、育てていくべきものであると考えます。

 ≪NDトピック≫

例年、本校では秋に読書集会を開いています。全校児童が講堂に集まり、「ND読書100選」をたくさん読めた人、読破できた人を紹介しています。
その後、今年度はストーリーテリングクラブによる『きつねのまど』(安房 直子 作)の朗読を行いました。
上手な朗読で分かりやすく、作中の登場人物が指で窓を作ったのを真似て多くの子どもがお話の世界に浸っていました。有意義な会となりました。

その読書集会ですが、今後やってみようと考えていることがあります。
朗読の他に、ブックトークやビブリオバトルに挑戦してみてはどうかということです。
友達や、お兄さん、お姉さんが紹介してくれる本は魅力的です。
こんなおもしろい本があるんだ!といった発見が期待できます。
図書室に眠っている本も、大人気の本になるかもしれません。

より多くの子ども達が読書好きになり、いろいろな本と出合うことで感性を磨いてほしいという思いを込めて、これからも活動していこうと思います。