本校国語科では、「対話によって自分の考えを豊かに表現できる子どもを育てる」をテーマに実践を行っています。

11月の研究発表会では、その研究の成果を発表しました。各学年の授業の実践をご紹介します。

 

<1年 「本をえらんでよもう」  一柳 丞>

『ずうっと、ずっと、大すきだよ』ハンス=ウィルヘルム 作・絵 久山太市 訳

 

 生まれた時からずっと一緒に暮らしてきた愛犬の「エルフ」と「ぼく」の物語。毎日一緒に遊んで、一緒に寝て、いつの間にかエルフは僕の心の一部となっていました。いつしかエルフは年老いていき、散歩も嫌がるようになり......、そしてとうとうお別れの時が来ます。

  本単元では、本時までの4時間でペープサートで他の児童と交流しながら楽しんで取り組み、「ぼく」と「エルフ」の心の通いをワークシートに書いてきました。1年生という発達段階では、文章で書けても発表に臆する児童もいれば、文章表記ができなくても口頭なら素直な気持ちを発する児童もいます。一人ひとりが、主体的に対話し、「ぼく」の気持ちに入りこめていければいいと考えています。

 自由交流の中で生まれる自発的な発話や対話を大切にしていきながら、主体性を育てていきたいと考えています。特に物語文においては、登場人物の心情やその変化を読み取りが重要となります。自発的な対話を起こさせるしかけを用いながら(今回はペープサート)児童自身が、自然と深い読み取りができるようになっていければいいと考えました。

  発表会当日は、「ゆめであったエルフに、『ぼく』はどんなおはなしをするのかな?」というめあてで授業を行いました。隣の児童と「エルフ」役、「ぼく」役にわかれ、ペープサートを使ってお別れをしたエルフと夢の中で対話をしました。1年生という発達段階では、一歩踏み込んだ主人公の感情の読み取りまでは難しく、夢の中でも「エルフ、何して遊ぶ?」「おにごっこしよう!きゃー!」といった対話が主でした。しかし「天国のエルフにお手紙を書こう」というワークシートを配布すると、こちらが思った以上に「ぼく」の気持ちとまっすぐに向き合い、本当の気持ちを伝えようとしている児童が多数見られました。

 

 まだ入学して半年ちょっとの1年生ですが、多くの児童が「書く」という学習活動の中で、表現の幅を広げているように感じました。

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<3年 「場面のうつりかわりをとらえて、感想をまとめよう」  鎌田 裕子>

『ちいちゃんのかげおくり』 あまんきみこ

 

 『ちいちゃんのかげおくり』は子どもたちが初めて出会う戦争文学です。子どもたちは自分たちの生活とは遠くかけ離れた過去の出来事である「戦争」や当たり前と思っている家族との生活、命、未来などの「平和」を主人公「ちいちゃん」の目を通して見つめることになります。ちいちゃんは幼く、その表現は非常に乏しい。そのため本文には、体言止め・ダッシュ等が多く、ちいちゃんの気持ちを想像しやすいものとなっています。その思いを想像するためには、ちいちゃんが置かれている状況、場面の様子を読まねばならず「場面の移り変わりや情景を叙述を基に想像して読む」言語活動を設定しやすい単元です。

 本単元での言語活動は、感想文を書くことです。感想文の条件を示した教科書を基に感想文例を学習モデルとして作成し、子どもたちに提示し、話し合う中から言語活動のポイントを3つまでの言葉でまとめます。そのポイントは「①はじめに『心に残った言葉』」「②その理由」「③自分の気持ち」としました。その上で、言語活動の習得を保障する「ミニ感想文」を書く言語活動を2次に設定しました。子どもたちは螺旋的反復的に場面ごとで「ミニ感想文」に取り組み、「ミニ感想文」を書くという目的をもって主体的に読むようになります。繰り返しを通して生まれる「ミニ感想文」を書くことへの「わかる・できる」手応えや自信は、主体的に読み言語活動に取り組む子どもたちの姿を生み出しました。3次では、2次で感想文を書くことに慣れた子どもたちが「ちいちゃんのかげおくり」の感想文を書き、さらに他の作品の感想文を書く機会を作りました。

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<4年「登場人物の心の交流を考えよう」    沼田 遼>

『ごんぎつね』 新美南吉

 

 この教材は、ひとりぼっちの小ぎつねのごんと、兵十との心のすれ違いが、美しい情景描写を背景に描き出された作品です。心の交流の美しさと悲しさが描かれていて、児童の興味・関心に沿いながらも、そこから一歩突き抜けて児童自身の心を直接つかむことで、心を揺さぶり、子どもの感性を豊かにし、自ら学習することを保証した教材とも言えます。

 学習では、ごんと兵十の気持ちを主として登場人物の心の変化について考えていきました。学習の導入では、新美南吉4作品(「てぶくろをかいに」「きょねんの木」「一年生たちとひよめ」「子どもがすきな神様」)を読み比べ、作品に共通するテーマは「心の変化」ということを理解してから「ごんぎつね」を読み始めました。他の新美作品同様、「ごんぎつね」でも心が変化すると考えている児童らは、どこでどのように心が変化していったかを考えながら読み進めていきます。

 次に、各場面のごんと兵十の2人の心の動きを考え、小グループで交流しました。「教科書のこのページのこの言葉から(動きから)気持ちの変化が分かる。」「ああ、たしかにそうだ!」子ども達は自分の考えをアウトプットして理解を深化し、友達の考えから新たな発想を得ていきます。各場面の2人の心の動きを理解した子ども達は、最後に「この話の結末は、良い結末か悪い結末か」という問いに対して考えました。良い、悪い、どちらでもないという3つの立場に分かれてディベートを行うと、ごんにとっては良かったが、兵十にとっては悪かったという結論で各クラス一致しました。

 

 この学習を通して、主要な登場人物の心の動きを捉えるために、細かな描写や2人の距離感など、児童らは一行一句読み込んでいきました。この学習で登場人物(他者)の心を学ぶことで、自己理解や他者理解が進んだことと思います。

 思春期に入る年齢の児童らは、最適な時期にこの教材を学びました。他者の言葉や行動から相手の気持ちを考えることのできる子どもに育つ一助になれたと思います。

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<5年「すぐれた表現に着目して、物語のみりょくを伝え合おう」  秋田 幸絵>

『大造じいさんとガン』椋鳩十

 

 『大造じいさんとガン』を学習材に、人物同士のかかわりを「すぐれた表現」に着目して考えていくことをねらいとしました。この物語は、冒頭で語り手の視点が書かれています。大造じいさんから35,6年前のかりの話をきいてこの物語を書いたという内容です。語り手が、まるで目の前で大造じいさんやガンの様子を見ているかのような豊かな表現が数多く存在する物語を読み、「すぐれた表現・心情カードづくり」という言語活動を行うことによって、カードをたくさん集めるという簡単なめあてを友達と交流しながら達成することで、表現の背景にある人物の心情にせまりました。

 研究発表会では、集めたカードをもとに、語り手が伝えたかった思いとは何かを考えました。

○残雪が、頭領として仲間を助けた姿に人間も心を打たれた→人間同士もお互いに助け合わなければならない

○大造じいさんが、傷ついた残雪を攻撃することはなかった→ひきょうなことをしてはいけない

○残雪は鳥だが、仲間を助けたいという強い思いをもっている→小さな生き物でも最後までプライドをもっている

○大造じいさんと残雪が何年も戦っているうちに友情がめばえた→ライバル、敵であっても勝負し、お互いを高め合っているうちに友情がめばえる(「友情」という言葉についてはちがうのではないかという議論になりました)

 様々な意見が出ましたが、これまでの学習をもとに、語り手の伝えたかったことを自分の言葉でまとめ、交流すること(iPadを使用)ができました。

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 これからも、子どもたちに「ことばの力」をつけ、適切に「ことばの力」を使って思いを表現できるよう、指導してまいりたいと思います。