本校国語科は、2016年度、「対話によって自分の考えを豊かに表現できる子どもを育てる」というテーマで研究を行いました。研究会の内容を一部ご紹介します。

<1年>

毎年恒例の校内授業研究ですが、今年度は 11月9日(水)に国語科「本はともだち/ずうっと、ずっと、大すきだよ」の6時間目を10人の先生方に参観していただきました。

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R4の子どもたちは、入学以来、「おおきなかぶ」「くじらぐも」などの物語文を学習してきています。その中で、自分がおもしろいと感じたことや不思議に思ったことなどを簡単な文章に書いたり、そのことについて話し合ったりする学習を積み重ねてきました。子どもたちが主体的に物語を想像豊かに読み、友だちとの対話を通してその読みを深め、読むことの楽しさを実感していくことは、進んで読書しようとする子どもたちの態度を養い自分の世界を広げる学習へとつながっていきます。そのことは、スピーチで自分の思いについて進んで発表したり、友だちの発表を聞きながら自然に友だちに自分の疑問点を尋ねたりする子どもたちの姿に現れてきました。

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自分なりの「読むこと」の世界を主体的に広げていこうとするために、授業では「ぼく」の気持ちを表す叙述についての感想や疑問を一人ひとりが持つこと、そこから出た学習課題に対しても一人ひとりが読み、自分なりの意見を書き、友達の意見を聴き、自分の意見との違いに気づき、疑問点を尋ねることによって読みを深め、豊かにできるようにしています。

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子どもたちにも授業の形が定着し、国語科・読むことの授業では「一人学び(学習課題に自分の意見と理由を考える時間)」「みんな学び(互いの意見と理由を読み合い、聴き合う時間)」「自分学び(すべての意見・理由の中で自分が最も意味があると思うものを決める時間)」という1時間の展開にスムーズに取り組んでいます。これらは、他教科にもよい影響を与えています。子どもたちは、一人ひとりが考えを述べ合うことに慣れ、共通点や相違点を確認し、相違点について考えるという流れがスムーズにできるようになりました。「みんな学び」で必ず何回かは自分の意見・理由を友達に発表できる学習体験は、1年生にとっては重要です。そこには、自分の意見・理由を磨いていく道筋が隠されており、教師が一方的に話して終わる授業とは質の異なる学習者の成長重視の考えがあります。子どもたちは、自分の手足、そして頭と心を動かさない限り伸びていきません。次期学習指導要領が重視している「主体的・対話的で深い学び」(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)は、子どもたちの中ではすでに具体化されているともいえます。 

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これらの学びには、教師の授業計画、教材研究が要となります。「学習課題は作品との出会いの意義に迫るものになっているか」「話し合いの目的と質は」(みんなで意見をひとつにまとめる話し合いと、自分の意見・理由を磨いていこうとする話し合いの違いを峻別することは、子どもたちの学びを左右します)――私が授業の目的を明確にし、自分の読みを深めていけるような授業をつくりたいと日々模索しています。

鎌田裕子

<3年>

 

私は、「すがたをかえる大豆」という説明文を使って、別の角度から全体像を捉えるという内容の研究授業を行いました。その実践をお伝えします。

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「すがたをかえる大豆」は、大豆の変化を段落ごとに説明し、筆者の主張が明確で、3年生が説明文の構造を理解することに大変効果的な教材です。この教材から説明文がどのように書かれているかを学んだ後に、自分で「すがたをかえる○○」というオリジナル説明文を書けることを目指します。

3年生の初期に学習した「言葉で遊ぼう」「こまを楽しむ」は、仮説検証型(問い⇒答え)の構造でしたが、今回学習する「すがたをかえる大豆」は解説型文章で書かれた、問いのない構造です。

まず、話の全体像をつかむために、「はじめ・中・終わり」に分ける学習を行います。「すがたをかえる大豆」の「終わり」は「このように」という、まとめの接続詞から容易に理解することができました。「終わり」は容易いのですが、「はじめ・中」の分かれ目が難しい説明文なのです。

 

2-1 研究授業では、「はじめと中はどこで分かれるか。」という課題に取り組みました。

まず、ペアで全文音読をし、話の流れを確認します。

次に課題「はじめと中はどこで分かれるか。」について考えます。

各々ワークシートに、本文を根拠に考えた分かれ目と、その理由を書いていきます。

2-2次に、考えをペアで交流します。

「私は○○と思うけど、どう思う?」

「でも、ここはこう考えた方がいいんじゃない?」

「本当や!考えが変わったわ!」

ペアで行う対話から、活発な議論が聞こえてきます。

そして、全員で意見交流をする全体対話に進みました。

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約8割の子どもは

「はじめ」=1段落、「中」=2~7段落と分けました。

このように分けた理由は、以下の3つです。

1、疑問符で終わる文章が1段落にしかないから(つまり「問い」)と捉えた。)

2、キーワードの「くふう」というワードが2~7段落にあるから。

3、「言葉で遊ぼう」「こまで楽しむ」は1段落が「はじめ」だったから。

このように分けられるのは、既習知識を使って考えたからであり、以前に学習した説明文を理解できた証拠でもあります。

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そしての残りの2割の子どもは、

「はじめ」=1・2段落、「中」=3~7段落と考えました。その理由は、

3~7段落は、接続詞でつながっているからと言います。

上記のような2つの考えに分かれることは予想通りです。

クラスの子どもは、このような二項対立が大好きです。自分が考えたものが正解であってほしいと考えているからです。白熱した二項対立のためには、自分が問いに対して考えをもつことが不可欠です。もちろん、考えた結果、分からなかったというのも1つの考えです。クイズ番組を見ている時が分かりやすいと思います。クイズに対して考えている時と、そうでない時、答えを知りたいという欲求は全く違います。真剣に考えている時は、自分の考えが正解かどうか、例えそのクイズが分からなくても知りたいものです。答えを知りたいという欲求が、より子ども達を主体的に、活動的にさせていきます。

子ども達は話し合いを進めます。考えをもった子ども達ですから、話し合いは大変盛り上がります。ですが、話し合いは平行線のままです。双方に考えがあり、お互いそれが正解だと思っています。双方が論理的な考えをしているので、どちら側も正解と思えます。子ども達は、結局どの段落で「はじめ・中」を分けていいのか分かりません。

そこで、助言1「はじめと中の分かれ目を考えるには、『終わり』から考えよう。」です。

「はじめ・中」の境目は、終わりのまとめの一文を理解できるかどうかなのです。

ここが授業の核でもあります。

「まとめ」の段落の「このように、大豆はいろいろなすがたで食べられています。」が分かれば、「いろいろなすがた」が書かれている場面が「中」であることが理解できます。

まとめを探し、そこから考えるというのが、この「すがたをかえる大豆」で学ぶ新しい解説型文章の構造であり、学んでほしいところなのです。

この助言をすると、子ども達は「中」の共通点を見つけていきます。

1、全て接続詞から始まっている。

2、文章の書き出しが全て同じだ。

3、大豆がいろいろな姿に変化している。(2段落はしていないことも気付く。)

1つの助言から、「はじめ」は1・2段落、「中」は3~7段落ということを子ども達は導き出しました。

しかし、子ども達から新たな疑問が生まれてきます。

「『中』は、大豆がすがたをかえることについて書かれているけど、『はじめ』の2段落は一体何?」

「問いかけの文章は1段落だけで2段落はないし、『はじめ』はただの余りもの?」

 当然、余った2段落は何なんだという疑問が生じます。今まで習ったことのないパターンです。

このように、学習の中から新たな疑問が見つかり、それを解決していくと、また疑問が見つかり......。授業はそのような繰り返しです。疑問、解決、疑問、解決の繰り返しが、学習を深めていく事だと考えます。

 

次の授業の課題は決まりました。「はじめ」が分かると、4年生で習う双括型の文章を自然と学ぶこととなります。クラスの疑問が、より発展的な内容へと進めていくのです。

 

 この授業では、全く違った角度から全体を捉えることができました。今後、説明文をさらに深く読める一因となることでしょう。これからも、授業中の疑問を大切にしながら、子ども達と一緒に授業を深めていきたいと考えています。

4

 

沼田遼

 

<4年>

 

IMG_0179 4年生の子どもたちは、これまでの国語科での学習経験も豊富になり、物語文、説明文、話し合い、言語の学習を既習の内容を思い出しながら、新たなめあてを意識して、授業に取り組むことができるようになってきています。

IMG_0185 今年度、研究の重点教材として選んだのは『ごんぎつね』。「ごん」と「兵十」の気持ちのすれ違いが主題で、ごんの視点で話を読み進めている子どもたちにとって、最終場面がとても悲しく、考えさせられる物語教材です。2016年度、4年生は、iPad学習の導入学年であったこともあり、視覚的に学習を深められないかと考え、「心情曲線」という人物のこころの動き波線で表す方法を試みました。具体的には、紙面の上半分を「兵十」、下半分を「ごん」の心の動きとし、どれぐらい二者の心が近づいているのかを考えてみます。この方法により自分の考えを表現し、その理由を伝え合うという動機が生まれ、物語をより丁寧に読み取ろうとする気持ちが子どもたちに生まれました。また、物語の主題である「ごん」の気持ちは早い段階から「兵十」に親しみをもっているけれど、「兵十」にはあまり届いていない場面ごとの気持ちのすれ違いを子どもたちがはっきりととらえることができました。iPadを活用することで、子どもたちのプリントをすぐに教室の大型モニターに映すことができます。小グループでの話し合いのときだけでなく、学級全体での話し合いでも、個々の意見をはっきりと示しながら、説明ができ、とても充実した学習となりました。

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 教師としては、さらに細かい心情の動きや、その動きの理由の差異など、話し合いがさらに深まるように導く問いかけをもっとできれば、より効果的な学習になったはずだという反省点が残っていますので、次の機会に活かしていきたいと考えています。

 

その他、2016年度の国語科学習でiPadを活用したものは主に以下の単元です。

・アップとルーズでの伝え方を意識しながら《写真機能》を利用した「リーフレット作り」

・書籍と並行して《インターネットの検索機能》を活用した「だれもが関わり合えるように」「私の研究レポート」での調べ学習

・《キー・ノート》(パワーポイントのようなプレゼンテーションアプリ)を使った「冬の手紙」「熟語、故事成語クイズ作り」

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 もちろん、iPadでの学習も行いつつ、手紙を手書きで書くことのよさや信頼度の高い書籍で調べることの大切さも、変わらずよいものを大切にしつつ、子どもたちに伝え、考えさせています。今後も、子どもたちが意欲的に取り組め、しっかりと学びを深めることを模索して、様々な学習機会を子どもたちにつくっていきたいと考えています。

本木千紗子

<6年>

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6年生は、「『鳥獣戯画』を読む」という教材を使って、筆者の見方に対する自分の考えを表現する学習を行いました。筆者は高畑勲氏。アニメーション作家として、日本のアニメの祖である『鳥獣戯画』を高く評価している高畑氏の文章に対して、その評価が適切なのかどうかという視点で批評していくという学習活動を行ってきました。文章の内容を理解し、受け止めた上で、自分の考えを持ち表現するというのはこれからの社会を生きていく子ども達にとって必要な力だと考えます。その点で、『鳥獣戯画』という題材は子ども達にとって想像を膨らませやすく、筆者の考えとも比べながら考えを表現しやすかったようです。

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研究授業では、結論部を抜いた状態で教材を読み進めながら批評をしていました。最後の授業で、結論部の文章を配り、最後の一文に入る言葉を考えました。

 

『鳥獣戯画』は、だから、    なのだ。

 

 文脈から、まず個人で空欄に当てはまる内容を考え、ワークシートに記入しました。その後、グループで最適なものを1つ選ぶという目標を設定し、話し合いをしました。話し合いで出た内容は、下記の通りです。

 P30603071 「日本文化の祖であり、大切な永遠の国宝」

  「ゆるがない日本文化の象徴」

  「守っていくべき日本文化の大きな特色」

  「祖先の生きた証であり、後世に伝えていかなくてはならないもの」...等

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直前に、祖先が困難な状況でも『鳥獣戯画』を守り抜いてきたという内容が書かれていたため、そのことについて触れたものが多くありました。その後、全体で交流し、それぞれの考えの理由も明確にしたところで、もう一度個人で考えをまとめました。(いずれもワークシートに記入)

 本校国語科では、授業のプロセスを次のように考えています。

自分の考えを持つ→考えを交流する→考えを深める

 交流のための交流にならないよう、目的意識を持って自分の考えを深めるために様々な意見を聞き、また自分の考えに取り入れていく活動を大切にしています。

 授業では、この後筆者が実際に書いていた内容を提示しました。

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『鳥獣戯画』は、だから、

国宝であるだけでなく、人類の宝なのだ。

 高畑さんのこの結論の内容について、自分たちの考えと比べて評価することで、この学習のまとめとしました。

 批評的に読むという学習は、筆者の考えを正確に理解するところから始まると思います。自分の考えさえ持てればよいというのではなく、まずは筆者の考えを受け止める必要があります。これは、国語のみならず普段の生活においても大切なことです。人の考えを理解し、受け止めること。まずはそれができる学習環境、クラスづくりをよりいっそう強化し、自分の考えをもつための基盤としたいと思います。

 

秋田幸絵