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学校長メッセージ

学校長メッセージ <2017年度後期>

学校長メッセージ <2017年度後期>

みんなが1人を、1人がみんなを育てる教育

principal2016-1

ノートルダム学院小学校 校長
川端 博之

 春休みのある日、1人の卒業生が私を訪ねてきました。
「4月から北海道にある大学に通うことになりました。」と、報告に来てくれたのです。その卒業生は、私が3年と4年の時に担任をした男の子でした。彼は、小学校を卒業してからも何度か学校に遊びに来て、そのたびに元気な姿を見せてくれました。この日は、3年ぶりの訪問でした。背もぐんと伸び、体格もしっかりした青年になっていました。その彼が歯学部に合格したことを報告に来てくれたのです。嬉しかったです。そして、一緒に喜び合いました。
 少しこの卒業生のことをお話したいと思います。彼は、2年生の時にノートルダム学院小学校に転校してきました。1年生の時は、地元の公立の小学校に通っていましたが、友達とうまくいかず、学校になじむことができずにいたのです。母親が卒業生だったこともあり、当時の教頭先生と相談のうえ、ノートルダム学院小学校に通うことになりました。
 彼は、友達とのコミュニケーションをとることがうまくできなかったり、集団での行動が一緒にできなかったり、初めてのことには、パニックになったりすることがたびたびあり、クラスのみんなと一緒にやっていくためには、相当な苦労が必要でした。また、母親も多くの不安を持っておられ、それを取り除くのも大切なことでした。担任を持った時、どのように彼と接したらよいのか。みんなと同じ行動をするには、どうしたらよいのか。何をすればよいのか考えました。
 ある日、学期ごとに学年テスト(まとめテスト)が行われたのですが、テストプリントを後ろに回していくとき、彼は、もらったプリントをくしゃくしゃに丸めて床にポンと捨てました。なぜ、そうしたのか分かりませんが、他の人に迷惑をかけることは、ほってはおけません。その時、私の怒りは頂点に達し、1つの決心をしました。「彼にとって学校中で一番怖い先生になろう」と。彼にとっては、母親は一番怖く、きちんとできないと怒られる存在でした。だから、学校の中での怖い厳しい母になり、きちんとできない時はできるまでさせるように厳しく接していきました。その甲斐あって、少しずつ変化が起こり、初めてのことでもほとんどパニックにならなくなりました。それが彼にとって良い状態なのかどうか分かりませんが、パニックを起こさなくなったのは、確かです。
 もう一つのエピソードをお話します。これは、自分でも感動させられた話です。3年生の時に音楽会の練習をしていたのですが、彼は、歌いながら、感情的になり、おもわず、涙があふれてくるのです。涙があふれるだけでなく、だんだんと歌う声が大きくなっていくのです。周りの歌声が聞こえなくなるくらいです。叫ぶような声になり、練習は上手くいきませんでした。練習の時は、その繰り返しで完成には近づきませんでした。そういう中で本番を迎えました。今と違って、コンサートホールではなく、学校の講堂で音楽会を行っていました。私は、彼が感動するあまり練習の時と同じように叫んで泣いてしまうのを心配していました。クラスの歌が始まり、心配していた通り、感情が高まり、サビの部分が近づくにつれて、声がどんどん大きくなってきました。「あ、ダメだ!」と思った瞬間、クラスの子どもたちが、彼の叫ぶような大きな声をかき消すくらい大きな声で歌い始めたのです。誰が言い始めたのでもなく、話し合ったのでもなく、積極的に大きな声を出したのです。自分たちの発表会を完成させたい一心だったのか、彼を目立たなくさせるためだったのか分かりませんが、子どもたちの大きな声だけが講堂中に響いていました。その歌声を聞いていたら、自然と涙があふれていました。今でも思い出すだけで涙が出そうになります。それくらい子どもたちに感動させられました。
 このように人と違う行動をするから、違った考えだから排除するのではなく、どのように受け入れ行動に移すかが大事だと思います。クラス全体の中で1人の人を成長させるには、いろいろな形があると思います。彼がいることで周りの友達も何らかの成長をすることができましたし、彼もそんなクラスの友達の中で成長することができたのだと思います。
 1人をみんなで育てる。みんなも1人によって育てられる。そうすることで、1人も成長し、みんなも成長することでしょう。このように子どもたちの力は大きいと思いますし、一人ひとりの成長が先生にとっては励みになります。彼もそんな子どもの一人でした。

 

2017年度前期「父母の会会報」172号掲載
(2017年9月30日発行)

登録日:2017年10月 2日/更新日:2017年10月 4日

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