⒈単元 『もののとけ方』

 

⒉授業の様子

【『とける』って何だろう?】

『とける』という日本語には、「溶ける」「解ける」「融ける」「説ける」など様々な意味があり、私たちは、その言葉を現象によって使い分けています。子ども達も、当然、『とける』という言葉を日常的に使い、様々な現象を目の当たりにしています。そこで、子ども達に今まで見たことがある『とける』の現象を書き出させたところ、自分たちの経験として次のようなことが出てきました。

 ・塩が水 ( お湯 ) にとける。

 ・砂糖が紅茶にとける。

 ・氷がとける。

 ・鉄がとける。

 ・アイスクリームがとける。

 ・問題がとける。

  塩でナメクジがとける。                 

など

  子どもたちは、『とける』の経験を思い出し、様々な意見を出していきました。ところが、途中で「“問題がとける”はいいの?」「塩でナメクジがとけるは変!」というつぶやきが聞こえてきました。

ここで、子どもたちに質問です。「なぜ、変だと感じるのでしょう?」

 「問題がとけるのとけるは違うとけるだから。」「ナメクジがとけるのも、本当はとけてないから違うのでは・・・」という意見が出てきました。このことから、他にも違う『とける』がないか分類させてみることにしました。

「問題がとける」と「砂糖が紅茶にとける」では、とけるの意味が違うことはすぐにわかりました。しかし、「チョコレートがとける」と「砂糖が紅茶にとける」を、同じだと考える子もいれば、なんとなく違う気がするけれど何が違うかはわからないという子が多くいました。4年生で学習した状態変化を思い出しながら、その違いについて触れ、今回の理科の授業で扱うのは、その中でも「砂糖が紅茶にとける」と同じような、『溶ける』であることを確認して授業を行いました。

 

【溶かしてみよう】

  さて、子ども達は、色々な『とける』があり、それぞれが違うことを知りましたが,実際には、溶けると混ざるを混同して認識していることがあります。子どもたちがそう考えるのは、日常生活でも“水溶き片栗粉”など、溶けておらず混ざっている状態で、溶けると表現されることが要因の一つだと考えられます。子どもたちが日常生活から得た考え方をピックアップして授業に取り入れることで、日常生活で目にする現象を、科学的な視点から見ることができるようになるのではないかと考えています。

そこで、溶けると混ざるの違いが分かるように、今回の授業では、さとう(三温糖)、土、小麦粉、食塩を溶かしてみることにしました。実際に溶かしてみる前に予想させると、ほとんど全員が「食塩と三温糖は溶けて、土は溶けない」と予想しましたが、小麦粉については意見が分かれました。

  そこで、実際に溶かしてみると、食塩や三温糖のように透明で粒がみえなくなってしまうものと、土や小麦粉のように不透明で下にたまってしまうものに分かれていて、普段使っている『溶ける』には、2種類ある(実際は、溶けると混ざる)ことに気が付きました。

 

 

3.まとめ

 その後の授業で、溶け残ったものを溶かすにはどうすればよいか、これまでの生活経験から実験を考えさせたとき、「氷は、温かいところにあるとすぐに溶けるから、温めるといいのでは…?」という意見が出てきました。そのとき、子ども達の中から「それは、溶けるが違うと思う。そのとけるは状態変化のとけるだから、今回は違うよ。」という指摘がありました。このように、学習の前に持っていた考えをあらためて、より科学的な視点から現象を見ることができるようになっていきました。

 子ども達は、学習する内容について、すでに自分なりに考えをもっています。しかし、その考えは自分で意識して得たものではなく、生活経験から得たものがほとんどです。そのすでに持っている考えを引き出したり、それをさらに分類したりすることで、子ども達は、現象をより明確に理解することができるのではないかと思います。今後も、子ども達が持っている自分なりの考えやこれまでの経験を大切にした上で、その考えを活かした指導をしていきたいと考えています。

 

ND トピックス  「牛乳は水溶液?」

 

  『とける』の分類の授業の後に、1人の児童から、「牛乳は水溶液ですか?透明じゃないけど、下にたまってもないから…」という疑問を投げかけられました。

  授業では、水溶液とは、①全体が透明 ②全体の濃度が均一 ③しばらくしても、水とものに分かれないものと学習しました。小麦粉や土は、その全てに当てはまらないけれど、たしかに牛乳は、全体が均一の濃度で、しばらく放っておいても下にたまることはありません。3つの条件のうち、2つは当てはまっています。

  しかし、牛乳は水溶液ではありません。牛乳のような溶液は、コロイド溶液といいます。 水の中にたんぱく質や脂肪の小さな粒がコロイド粒子として分散しています。コロイド粒子の大きさは、約直径 1 100 nm 程度です。この程度の大きさの粒子は、ろ紙を通りぬけてしまうため、水溶液と同様、ろ過によって分けることはできませんが、コロイド溶液は水溶液とは違う性質を示します。

  身近なものを分類してみるだけでも、「これはどっちだろう」と思うものもたくさんあります。身近に潜む不思議を、自分の疑問として認識できるかどうかで、その後の学びがより深まっていくのだと感じました。