研究と実践-社会科部

 

テーマ:調べ学習のコツを見つけよう 

 授業者: 遠藤 克哉

1.単元名 「 テーマにそって調べ、卒業研究にまとめる 」

 

2.単元・教材について

 

  総合的な学習とは、自ら課題を見つけ、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることを目的に、平成 12 年度から始められた学習です。具体的な内容については、地域や学校、児童の実態等に応じて、教科横断的な学習、児童の興味・関心に基づく学習など、創意工夫を生かした教育活動を各学校が定める、とされています。本校では、 2003 年度に修学旅行を「ディスカバリー」として改編して、毎年7~8つのコースを設けることで、児童がこれらの中から参加コースを選択できるようにしました。そして、自分が選んだコースの学習内容に因んだテーマを設定して、それに即して調べ学習を行う、という形をとっています。

児童にとっては、同じ学習テーマの子も一定数いる一方で、同じコースだがテーマは少し違う子もいる、ということになります。テーマが全く同じ、或いはテーマが全く自由の調べ学習とは異なり、ある一定の共通項があるために、かえってお互いに関心を持ち、また自分に取り入れやすい、参考にしやすい側面がある、と捉えています。

 

一方で、総合的な学習で目標にされている「自ら課題を見つけ、考え、主体的な判断をする」という点では、個人個人のレベルにおいて、まだ改善する余地があると考えています。

 ここでは、次の3つのポイントで捉えています。

まず、 調べ学習の手段を広げることです。卒業研究では、一人ひとりパソコンを使って調べ学習を行っています。ヤフーやグーグルという検索用サイトを用いて、自分のテーマに出てくるキーワードを調べて、その中で更に分からない言葉を調べていく、という具合です。言わば、パソコンは事典と同じです。ただ、パソコンがその奥に抱えている情報量は膨大で、しかもクリックしてページを開いていかないと、何が載っているのか分からない、という特徴を持っています。ですから、ある程度テーマについて知識があり、見通しを持っていないといけません。そこで、現行のパソコンを用いた学習以外に、できる限り書籍を準備させ、それを軸にして調べ学習を展開するようにしていきたいと思います。

2つ目は、 事前学習をしっかりと行うことです。卒業研究のテーマは、各人がディスカバリーの各コースの訪問先をもとに選んでいます。また、ディスカバリーに際しては、原則月曜日の1時間目にコース毎の事前学習会を行っています。上に記しましたように、パソコンを使っての調べ学習は決して容易ではないので、予めこの事前学習会でそのコースの内容について一定の知識を得て、訪問先について学習を深めています。夏休み(7月下旬)にディスカバリーに行って、夏休み明けから卒業研究のまとめに入り、9月末には完成させる、というスケジュールで進めています。

3つ目としては、 対話の形を取り入れて、個人の調べ学習の成果を、折に触れて相互に発表して、学びあう機会をもつことです。これまでは発表会は、卒業研究をまとめた後の 11 月に、参観授業にあわせて卒業研究発表会として行ってきました。それに対してここで考えているのは、卒業研究に取り組んでいる期間中の発表会です。卒業研究を進めながら相互に中間発表を行うことで、他の人の取り組みを知り、その良いところを発見して、自分の調べ学習、まとめに生かすことができます。また、発表者にとっては、感想を返してもらうことで、自分の研究をふり返って、今後に生かすことができる、と考えています。

今回の研究授業で取り扱うのは、この3つ目の、対話形式の発表会です。卒業研究を行っている間に相互交流を図ることで、調べ方のコツ、また調べる内容の見つけ方、目のつけどころを学ぶことができ、個々の児童の卒業研究に生きてくると信じています。

 

3.単元の目標

・自分の卒業研究テーマについて調べ、まとめる活動に進んで取り組もうとする。

・自分の卒業研究テーマに即して、学習の進め方について自ら考え、よりよく問題を解決できるように、工夫することができる。

・自分の卒業研究テーマについて調べて、まとめることができる。

・自分の卒業研究テーマについて必要な知識を持ち、理解する。

 

 

4.指導 計画 (全 30 時間

第1次…卒業研究のテーマを決めて、調べ学習を始める。(4)

・ディスカバリー各コースの概要を知る。(2)

・卒業研究のテーマを決めて、ホームページで調べながら、全体の構成を練る。(2)

第2次…他の人の発表から学びながら、調べ学習を深める。(7/20、本時)

・クラスメートの発表を聴き、良い点を発見して、自分に取り入れる。

・ホームページだけでなく、適当な文献や資料を読み、活用しながら、調べる。

第3次…卒業研究をまとめて、他の人に成果を発表しながら、自己評価を行う。(6)

・自分の感想や意見を加えて、卒業研究を仕上げる。(3)

・卒業研究の大切なところを、要約して発表する。(2)

・ディスカバリーの選択から卒業研究完成までの取り組みをふり返り、評価する。(1)

 

 

5.本時の目標

・調べ学習についての発表を聞いて、良いところに気づく。

・自分の調べ学習にどう工夫を取り入れたらよいかを考えて、その方法を見出す。

 

 

6.本時の展開

 

 

 

7.実際に出題されたミニクイズ(答え)

①聖路加国際病院を建設した日野原先生は、なぜこのような大きな病院を建てたのでしょう。

 (昭和20年の東京大空襲のとき、100万人が焼け出され、たくさんの患者が亡くなりました。日野原先生は治療にあたりましたが、病院に入れない患者が野外で亡くなりました。先生は大災害に耐えられる病院を必ず作ってみせると心に誓いました。)

②グラバー園には、変わった形をした敷石があります。どんな形でしょう。1星、2三角形、3四角形、4ハート型、5ダイヤ型(4ハート型)

③日本では、歯科医院とコンビニのどちらがどれだけ多いでしょう。(歯科医院がコンビニの1.6倍多い。歯科医院が多いということで、医療が充実していると言えるが、歯医者にとっては競争が激しく、大変。)

④タクシーのことを、北海道の方言では何というでしょう。1タクシー、2タクタク、3とんしゃ、4せばえー(3とんしゃ。とんしゃは、豚車と書きます。車を豚に引かせていたのが由来ではないでしょうか。)

⑤坂本龍馬は日本初の新婚旅行をしましたが、どこへ行ったでしょう。1別府温泉、2霧島温泉、3黒川温泉(2霧島温泉。寺田屋事件で負った傷を癒すために西郷が勧めたと言われています。船旅を含めて89日間の旅行でした。)

⑥北海道札幌市の小学校のプールは、他の地域のプールと少し変わっています。どんなところが変わっているのでしょうか。(寒くないように全体にビニールシートがかかっています。北海道は気温が25度以上になる日も少なく、そのままではプールもほとんど使えません。ビニールシートで覆われていると、プールサイドに上がっても寒い風にあたることもなく、とても快適です。)

 

 

8.子どもたちが見つけた、お互いの調べ学習の良いところ

・人の気持ちまでしっかりと書いていた。

・深いところまで調べて、裏にある因果関係をつかまえていた。

・タクシーやプールなど、身近にあるものにつなげて調べていた。

・理由やいきさつをくわしく調べて説明していた。

・私たちの生活と比べて考えることができる問題だった。

・身近でも、人が知らなさそうなことを書いていた。

・自分の感想も書いているところが良かった。

・どうやって調べたのか説明していて、分かりやすかった。

 

 

  9.授業後の研究会でのふり返り

 

・落ち着きがあって良かった。お互いの意見をしっかり聴くことができていた。

・穏やかで受け入れている姿勢が良かった。

・調べ方が画一的にならないように、継続的に中間発表をしていくべき。アイヌ問題から他の人種問題に対象が発展していくような、広がりがある調べ学習になるように、サポートしていきたい。

・インターネット以外にも、本や家族からの言葉がきっかけになった子もいるだろう。そのきっかけが見えやすいと更に良い。きっかけから始まって、人々の思いや願いに触れる機会にしてほしい。

・お互いの意見・感想を発表する授業の場合、ふだんの学級経営が大きく影響する。自由に自分の考えを言うことができるように、更にクラスのよい雰囲気作りに努めてほしい。

 

 今回はクイズを出し合うという形でお互いに発表をしましたが、研究会での意見でも出たように、規模は小さくても、これからも中間発表を行う必要があると思います。自分の卒業研究を作り上げていく過程で、クラスメートの進み具合を知り、その内容に触れることは、それだけで意識向上につながります。また、調べていく中で見つけた興味深い事実、豆知識を披露してもらうことで、学習の深め方や広げ方のヒントを得ることもできると思います。

   以上、今回の研究授業を、今後の指導に生かしていきたいと考えています。

 


≪NDトピックス≫

 

 学校は、子どもたちが学び、勉強する場所であることはもちろんですが、同時に先生たちが学び、研究する場でもあります。そういう意味でこの夏の研修会は、特別な機会となりました。

 この日私小連夏季研修会は、全国の私立小学校の先生たちが集う3日間の勉強会ですが、今年は京都で行われました。社会科では、うち2日目のフィールドワークを、ノートルダム学院小学校で担当しました。「侘び寂びとは何か?」というテーマで研修を行いました。午前中は表千家会館と表千家不審庵を見学して茶の湯について勉強しました。午後は京都市考古資料館で市内の遺跡からこれまで出土した茶器を見せていただき、樂美術館で樂茶碗について学ぶとともに、樂吉左衛門先生からご講演をいただくことができました。どこの見学も大変印象深く、またとても勉強になりましたが、中でも樂先生とのひとときは特別なものでした。

 先生との打ち合わせについては、この研究と実践のホームページ冒頭にも書かせていただきましたが、講演本番でも、参加者からの質問に一つひとつ丁寧に答えて下さいました。先生は、「侘び寂び」を定義するとそれは逃げてしまう、と明確に述べることは避けながら、その本質についてヒントを示しておられました。

・ものをつくるときは、常に激しくありたい。

・芸術は、それまでの既成観念にNOと言うこと。利休の「侘び寂び」の出発点もそこにあったことを忘れてはいけない。

・作品についてできれば説明しないようにしたい。鑑賞者が自発的に質問して、自分で発見していくように。自ら見つけることが、次の興味へとつながっていく。

 樂先生は、ご自身が海外留学されたご経験をもとに、若い人たちにもっと日本から出て研鑽を積んでほしいとも語っておられました。海外に出ることで、日本と外国を比較して、また日本文化について語る必要が出てくる。そこから改めて日本について知り、勉強することになる、とおっしゃっていました。

 私たち教師自身、この研修を通して得たものを子どもたちに返し、また研究を深めていきたいと強く思いました。