学校長メッセージ <2014年度後期>
学校長メッセージ <2014年度後期>
おうちから世界を見よう |
ノートルダム学院小学校 校長 |
W杯ブラジル大会はドイツの優勝で幕を閉じました。世界中を熱気に巻き込んだ32日間でした。
ふだんはサッカーにかかわりがなくても、W杯という世界最大のイベントにいつのまにか取り込まれてしまった方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。確かに、たったひとつのボールをめぐって攻め守るサッカーというスポーツは、ほかの競技に比べて実にシンプルであり、それゆえ、奥深いとも言えるでしょう。
競技人口は他に比べ、おそらく上位のはずです。その理由は何かというと、広場があれば、誰でもいつでもできるからではないでしょうか。スキーやアイススケートは暑い国ではできません。日本では話題性がとても高い野球は、近代アメリカに生まれましたが、おこなわれている国の数は今でも限られています。近年、イタリア・オランダなどヨーロッパの国に広まりつつありますが、野球人口はサッカーを凌げないでしょう。テニスと水泳も歴史の浅いスポーツです。今でこそ違いますが、誕生してから長い間、それらは黒人には開放されないという悲しい時代がありました。サッカーはその点、人種の違いを超え、たくさんの国で、かつ長期間にわたって愛され、おこなわれ続けてきているという特長を持っています。
それゆえ、サッカーの世界大会は、多くの国や地域のいろいろな様相を教えてくれます。これは、おうちで『国際』を学ぶ材料としてはうってつけではないでしょうか。母国の日本を応援し、その勝敗に一喜一憂するにとどまらず、ほかの国々や地域とそこに住む人々へ、子ども達の目を向けさせるのです。
W杯を録画やニュースでご覧になった時、ご家庭でこんなやりとりはありましたか。
「W杯には32のチームが出てるね。世界に国は全部でいくつあるのかな」
「選手の体の色が違うね。白い人、黒い人、そして黄色い人。でも、そんな違いがあっても、スポーツならみんないっしょになってできるんだ。いいことだなあ。だからこんなに人気があるんだろうねえ」
父:「すごい応援だね。どこの国の人も、自分の国を誇りに思っているんだろうなあ」
母:「代表チームにならなくても、自分の国を誇りに思わない人はいないはずよ」
子どもへの質問でなくてもいいのです。親の感心や感動、心の底からのつぶやき、そして両親の会話に、子どもは耳を傾けています。大好きな人の言動に注目するのは当たり前のことですから。
国際性・国際化というと、その育成を学校に期待し任せようと考えるのはごく当然です。しかし、家でも可能です。なぜなら、親の存在感は絶大なものだからです。もし自信が十分ないとしても、親は学校にすべてを委ねるのではなく、家庭と学校が協同して、着実に歩を進ませたいものです。その歩ませたい道のひとつが「国際」です。まだ小さいからと言わず、年端のいかない子どもでもわかるような表現で尋ねたり、大げさに言葉を返してあげたらいいのです。親は教師と同じく、常に子どもに意識を置き、彼らの志向を探り、良質な題材を提供することで、好循環の教育活動を始められます。教育は、意図的な営みなのです。いろいろなものの中から、取捨選択してクオリティの高い教材を選び、それを与えてあげるのです。
そのためには、親が、世界に対して常にアンテナを張っておく必要があります。地球の裏側であろうと、事件や災害が起きたら、即座にニュースが映像入りでお茶の間に入ってくるという、この情報社会の利便を活かして、学校とともに国際人に育つ種を蒔きましょう。
2014年度後期「父母の会会報」166号掲載
(2014年9月27日発行)
登録日:2014年10月 9日/更新日:2014年10月 9日