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授業紹介 クローズアップ

授業紹介 クローズアップ 5月号 社会科 5年「わたしたちのくらしをささえる工業生産」

登録日:2014年5月20日/更新日:2014年5月21日

5年社会科担当 遠藤 克哉

 

≪?(はてな)のある教材提示≫

 

今年度社会科では、「?(はてな)のある教材提示」をテーマに授業研究をスタートしています。ここでは、「わたしたちのくらしをささえる工業生産」の単元から2つの授業をご紹介します。

 

(1)広がるIC産業

 

パソコンをはじめ、IC(集積回路)は、多くの機械製品に内蔵されています。しかし、このICを実際に目にすることはほとんどありません。機械類を分解することは、故障の恐れがあるためです。そこで、今回、私は自宅で使われなくなった2つの電化製品を教材として学校に持っていくことにしました。一つは2モデル前のゲーム機、もう一つはアナログ放送時代のDVDレコーダーです。

授業の導入としては、まずICそのものの拡大写真を黒板(及び教室パソコン)に提示しました。ICの「C」はCircuit(サーキット)の「C」で、回路の意味です、とその機械の頭脳にあたるものであることを示します。その上で、ゲーム機を箱から取り出し、その蓋を外して、全体に向けて中を見せます。

 

教師「ICはどこにある?」

子どもたちの中にはいち早く緑の基板を見つけて、「真ん中少し上の緑色のところにある。」と口にする子もいます。が、特に後ろの席の子は、一体どこに写真のICがあるのか、見つけられないでいます。そこで、こちらから言葉をかけます。

 

教師「やっぱり分かりにくいよね?」

少し待っていると、子どもたちの中から「小さいし。」と呟く子が出てきます。IC産業の学習についておさえるべき点は、「ICは小さく、軽い」ということです。このことをできるだけ、子どもたちにまず感じてもらい、子どもの口から引き出したいと考えて、問いかけました。

 

 これに続いて、DVDレコーダーの方も同様に見せます。やはり見つけにくいですが、今度は、ゲーム機とは違うところがあります。

児童「もう一つ、右にもある。」

児童「二つほとんどくっついている。」

 レコーダーでは、6つのICを見つけることができました。

教師「ビデオレコーダーの方が多いね。・・・どうしてかな。」

 なかなか発言は出ませんが、「レコーダーでできることは何?」と考えていくと、DVDの再生、テレビ番組の録画、編集・・・とできる操作が多いことが分かります。レコーダーの方が複雑な機能を持っているということを、ICの数を通しても確かめることができました。

 

 今後の課題としては、携帯電話などの最新機器で、ICがどれだけコンパクトになっているか分かるようにすることと、ICチップの中にいかにたくさんの回路が収められているかを実感できるようにすることが挙げられます。

 社会科の産業の授業で難しいのは、常に状況が変わり、技術も進歩していくという点です。近年は特にその傾向が強いと言えます。加えて、教師自身も来年また5年生を担当できるかどうかは分からない、ということも教材研究を難しくしています。次に同じ学年を受け持つのが何年も後かもしれない、ということになると、その変化や進歩を追っていくのは、心理的にも物理的にも厳しいものがあります。これからも辛抱強く、子どもたちを引きつけることができるような先端技術を追跡していきたいと思います。

 

 

(2)関連工場の役割

 

関連工場が自動車部品を作り、それらを自動車工場に納入、組み立てに至る工程を学習するため、今回は私自身の体験そのものを引き合いに出すことを考えました。

 

教師「最近、家の引越しをしたんだけど、引越し先で車庫の天井が低いために、車が入らなかった。どうしたらいいだろう?」

車庫の天井を上げたらどうか、床を削る方が良い-車庫をリフォームするという意見が挙がりました。一方で、しばらく考えていると、タイヤを小さくする、車の天井部分の形を変えて低くする、などといった、車の高さを変えるという意見も出るようになりました。

 

教師「先生の車はもともと京都の工場で作られた。そこの自動車会社の方に相談したところ、これを交換したらいいと勧めてもらった。これは何かな?」(部品を示して、子どもたちに回して見てもらう)

実際には、販売員の方は、車のサスペンションを交換して、車高を調節できるものをつけることを勧めて下さっていました。子どもたちは実物を見て、触って、何のために使うものかを考えました。サスペンションは、本来タイヤの上で車体を支えるために使われますが、子どもたちの予想では、「車の高さを縮めるために引っ張っている。」という表現が多かったです。

自分の考えをノートに記した後、何のためのものか、答えを発表しました。参考までに、バイクや自転車に使われているサスペンションの写真を見せると、見たことがあると言う子もずいぶん出ます。

続けて、サスペンションが入っていたダンボール箱を示しました。箱にはサスペンションを作った会社と住所が記されています。

 

教師「これを作ったのは大阪の工場。でも、車の工場は京都にあるんだけど。どういうこと?」

子どもたちからは、「部品を作っている工場と、それらを組み立てて車を作っている工場が違う。」という考えが出てきます。

ここから、資料集に載っている、自動車工場と関連工場の分布を示した地図(愛知県豊田市)、関連工場から部品が納められる模式図を、空欄の穴埋めをする形で見ていきます。模式図では、ガラス工場から窓ガラスが、ゴム工場からタイヤがやってくる様子を確かめました。

この後、これら自動車に使われる約3万個の部品は、親会社の注文に応じて作られること、1つの部品のためにいくつかの関連工場が協力して作る場合もしばしばあることなどに、学習は及びます。必要な数だけ、決められた日時にとどけるジャスト・イン・タイム方式も、大切なポイントとしておさえていきます。

 

≪教材提示に言葉かけを加えて≫

ふだん目にすることの少ない教材を提供するのは、子どもたちの関心を引き出す上で有効です。それだけに、その後教材提示から一番大切な本題にどう入るか、どうつなげるか、というのはとても大切だと感じています。今回は、以上の2つの授業を通して、更に言葉かけの大切さを考えました。

 

(1)広がるIC産業での「やっぱり分かりにくいよね?」

 これまでの自分をふり返ると、子どもたちから「どれがICか分からない。」という発言が出た時点で、「ICは小さいからね。」と、こちらが答えてしまっていたことが多かったと思います。そこで、今回はその答えを子どもたちから引き出したいと考えて、授業に臨みました。

本校では、4年生以上で教科担任制をとっているため、4クラスで計4回授業を行うことができます。ここの場面で、最初のクラスでは「どうして(分かりにくいのかな)?」と、明確に理由を尋ねる形で問いかけていました。これに対して、2つ目のクラスではこの項のはじめに記したように「分かりにくいよね。」とくり返すに止めて、黙ることにしました。すると、黙る、といってもほんの2・3秒間ですが、そこで子どもから「小さいもん。」などと答えが出てきたのです。「そう!その通り!小さいからね!」こちらも興奮して応じました。これは、あとの2クラスでも、同じでした。必ず子どもから、「小さいし。」という一言が返ってきました。

不思議なのは、明確に理由を尋ねた場合よりも、やりとりとして自然だったことです。しかも場の雰囲気としても、みんなで大切なことを見つけたような空気でとても良かったと感じました。

 

(2)関連工場の役割「これを作ったのは大阪の工場。でも、車の工場は京都にあるんだけど。どういうこと?」

この授業でも、最初のクラスでは、この場面に至ってから、「実は、車の工場はもともと京都だったんだ。でも、ほら、サスペンションの工場は?見て、大阪でしょう。どうしてかな?」と尋ねていました。でも、どうもこれだと、唐突に理由を聞かれることへの違和感からか、自然な流れになりませんでした。

そこで、次のクラスからは、車庫と車の相談を持ちかけるところから、「車は京都で作られた」ことをおさえ、サスペンションという部品を変えたんだと、問いの答えが出たときに、「変なんだけど、これ住所が大阪なんだ。・・・どういうことかな。」と問いかける形に変更することにしました。これだと、「変なんだけど」という言葉に、問いかけとしての意味があるため、文末の「どういうこと?」がなくても、子どもから「車と部品を作っているところが違う」と、自然に答えが出てくるようになりました。

 

 今回の試みを通して、授業の中での大まかな展開は同じでも、その言葉かけによって流れが大きく変わることを実感しました。流れが自然だと、疑問がより子どもたち自身の課題になり、答えを見出したときにも、より自分たち自身の発見として捉えることができるのだと感じています。

 これからも、教材準備、教材提示と併せて、言葉かけにも工夫を加えながら授業をしていきたいと思います。

登録日:2014年5月20日/更新日:2014年5月21日

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