ページの先頭です 本文へスキップ
ここからグローバルメニューです
グローバルメニューはここまでです 先頭へもどる ここからページ内容です
  1. ホーム
  2. NDダイアリー
  3. 6月10日(火) 子どもにとって運動における距離とは何を意味するのだろうか

NDダイアリー

6月10日(火) 子どもにとって運動における距離とは何を意味するのだろうか

登録日:2014年6月10日/更新日:2014年6月10日

 先ず,距離と言う言葉の意味について気づかされたことを紹介します。一つは,最近読んだ本の中に言語的距離という文章を見つけたことです。それは英語系の言語体系と日本語の体系には大きな差があり,日本人が英語を学ぶには大変てこずり,時間がかかります。ドイツ語やオランダ語やフランス語の体系は英語系の体系によく似ており,その中のひとつをしっかり学習しておれば,そんなに時間をかけずにスムースに頭の中に入るということです。また,中国語,韓国語,日本語の体系はよく似ているので,日本人が中国語や韓国語を学ぶのに時間を要しなく学びやすいということです。逆に言えば英語圏の人は日本語を学習するのに時間がかかります。という中身の文章です。もう一つは,朝日新聞のスポーツ欄に「パーソナリティエリア」という見出しでスポーツ記者が書いたコラムです。言葉を直訳すると「個人の領域」となるが,その記者は電車の中での込み具合を例に挙げながら「パーソナリテエリア」が人に及ぼす影響についての意見を述べ,加えてサッカーにおける「パーソナリテエリア」について次のように述べていたのです。試合中や練習において,相手をできるだけ自分に引きつける,同時に狭い場所でのボールコントロールを正確に行い相手を動かし,かわして見方にパスをする,時にはゴールを狙い得点に結びつけ勝利に貢献する,そんな技が数多く見られるようになった。つまり,狭いエリアをいかに活用するか,その技を磨き上げ,試合運びができるようになった。このことはボールを保持するエリアというか距離というかそれが狭く,短くなって来た。というサッカー界の様相を示した記事です。なるほど空間や距離について,上述したような捉え方が視点を変えればできるんだと納得して,距離感という見方に視点を当て,子どもにとっての運動における距離とは如何なるものかについて話を進めたいと思います。
 私は4年前より体育授業で体育ノートを担任の許可を得て各自に持たせ,活動内容,不思議さ,疑問,質問など自由に書かせ,活動における子どもたちの反応がどうであったかを確かめ授業を進めています。子どもたちの活動に対する反応は,楽しかった,難しかった,できなかった,しんどかった,疲れた,暑かった,上手になるコツを教えてくださいなどさまざまです。楽しかったという中身は,とても抽象的な表現ですから,それぞれの思いが出ているように見えますが,何がどのように自分にとって楽しかったのか,その真意はなかなか読み取れません。それに対して,できなかった,難しかった,できるようになるコツを教えてくださいは素直で,私にとってはとても納得できる言葉として受け止めています。だから,できなかった,難しかった,コツを教えてくださいは,この子たちにとって,この活動がこれまでの自分の体験の中で出会っていないか少なかったと気づかされるわけです。できなかった,難しかったという呟きは○○さん,□□君ができるのにどうして私は,僕はできないのだろうという悔しい思いが伝わってきます。コツを教えてくださいというつぶやきは,○○さん,□□君に一刻も早く追いつきたいという願いがとても強い声だと受け取っています。
 ところで,体育のノートの中では,この強い願いをかなえるためのコツを教えての叫びが意外に多いのです。コツという言葉は骨と書きます。意味は,ある物事をうまく成し遂げる要領です。骨の形成はカルシウムを食べたからすぐ作られるものではありません。骨の形成が示す如く,言葉で言ってたやすく叶えられるものでもありません。長い経験を積み重ね作り上げられたものですから簡単に言えるものでもありません。「このコツを教えてください」は運動能力の高い子はよっぽどでないと書きませんが,どちらかというと,日ごろ遊んでいない子に限って発する言葉です。
 運動における学びには,①規制されない自由な場面での学び(遊び)と②規制された意図的に示された場面での学びの二つが考えられます。特に幼児期の間に①の学びが非常に重要です。この時期は大人に近い神経細胞の発達が見られるからです。この神経細胞の中に沢山の遊びで培った体験の動きが記憶されるからです。体育ノートで示される難しかった悔しさやできなかった願いをこめたつぶやきは,幼児期において遊びの中で培った体験の多い,少ないことの影響を大きく受けているということです。詳しく言えば運動(スポーツ)につながる基礎基本の動き(リズム能力,バランス能力,反応能力,変換能力,連結能力,定位能力,識別能力→道具や用具を操作する能力)の習得がいかに子どもの体の中に蓄積されたかです。
 では,できなかった,難しかった,コツを教えてと伝えてくれた子にはどんな対応が必要なのでしょうか。私の答えは少なくとも学校での休み時間には外や体育館で体を動かしてくださいと伝えています。鉄棒が苦手な子には鉄棒と仲良くなってください。ボール運動が苦手な子にはボールと仲良く遊んでくださいと伝えています。そうすることによって自分の体と鉄棒の技,自分の体とボールの技の距離を徐々に短くしていくのです。今まで遠かった距離が短くなればこちらのちょっとしたアドバイスが飲み込めるようになります。よく遊んでいる子ほどできる達成度は高まります。先ほど述べた遊びの効果が漢方薬のようにじわりじわりと効いて力を発揮するのです。
 もうひとつの対応は,体育授業の中に先述した運動につながる基礎基本の動きを意図的に組み込み,何度も繰り返し行いその動きが正確にできるようにするのです。このことも今自分の持っている技と高い技との距離を短くしていく手立てとなります。しかし,指導者にとっては忍耐力が必要です。できない子にとっては,指導者の言うことを聞けばすぐできるという感覚がとても強いです。だから基礎基本を身につける辛抱がなかなかできず,時にはできない子にとって苦痛を感じることもあります。しかし,辛抱強くやればやるほどこの子にとって必要な動きは何かを理解できるようになるのです。逆に言えば教える立場が教えられる立場になり,そこから一段とできない子と指導者との距離感がなくなり,こちらの指示をうまく受け入れられるようになるのです。できない子の目線にまで近づくことが大切です。
 私は体育ノートから子どもの呟きを受け止めながら,彼らとの運動に関する距離を身近なものにしています。そのために「できるようにしよう」とか「わかるようにしよう」という想いにこだわらず,体育の面白さを子どもに感じさせる授業を目指しております。そして彼らにメッセージを送りながら彼らの中にある潜在能力を掘り起こしていきたいと考えています。

NDダイアリー 2014年6月10日        担当  三笠 正治

登録日:2014年6月10日/更新日:2014年6月10日

ここからサブメニューです

学校長ブログ

校長ブログ 3月20日(金) 今年度無事終了

  2014(平成26)年度、最後の学業日を無事に終えました

更新日:2015年03月20日(金)

続きを読む

過去の活動

サブメニューはここまでです

ページの上部へ

ここからページの本文です ここまでが本文です 先頭へもどる ここからこのウェブサイトに関する情報です ここまでがウェブサイトに関する情報です このページに関する情報は以上です 先頭へもどる