4月11日(金) 1948年のトランク
登録日:2014年4月11日/更新日:2014年4月14日
昨日の夕方5時頃、わたしのところに血相を変えて飛び込んで来られた先生がおっしゃるのです。
"シスター、あのトランクお捨てになるのですか! 残して下さ~い。 あれは私たちの忘れてはならない初期のシスター方の形見の品です。" 悲痛な叫びでした。
保健室の横に置かれていた古くて壊れそうな3個の大きなトランクは、今まさに引越し業者のトラックに積み込まれようとしていたところでした。数人の先生方もそれを聞きつけてか飛んで来られ、そのトランクは力のある男性方に丁寧に抱えられ、校舎3階の同窓会ルームに無事運び込まれることになりました。
実は60年前、最初の4人のシスター方が来日された時、貨物船ではるばるアメリカから神戸港を経由して鹿ケ谷の修道院まで運ばれてきたものでした。私達はそのトランクを、シスターたちへの感謝をこめて大切に保管してきたのですが、引越しを機に一個だけ残してあとは処分することにしたのです。つい数分前に、そのトランクに手を合わせ、
"シスターたちの命を支えて3年間分の食料を運んでくれたトランクよ。ありがとう。さようなら。"
と涙の別れを告げたばかりでした。それが先生方の暖かいお心に出会い、再度この小学校にもどることになりました。同窓会室に置きましたので、初期のころの卒業生たちはきっと、シスターユージニアやメリーポーロのお名前を見つけて懐かしがることでしょう。
時の日本政府はアメリカ人のシスターたちに「日本に来るのなら、3年間分の食料を持ってくるように」と言ったとか。
その当時のシスター方の日記には「85個の大きな箱やトランクを貨物船に積んだ」と書かれています。そんなにご苦労してまで、この日本に、そして京都に教育の種を蒔くために来てくださったのです。そんなトランクへの熱い想いを示して下さった先生方に感激し、再び涙する私でした。
シスターベアトリス 田中範子
登録日:2014年4月11日/更新日:2014年4月14日