授業紹介 クローズアップ 7月号 算数科 5年「分数」
登録日:2014年7月20日/更新日:2014年7月20日
5年算数科担当 植村友紀
分数の単元は5年生で初めて登場するわけではありません。
2年生から学習し,3年生,4年生,5年生と少しずつ繰り返しながら学習しています。
つまり,分数の意味については十分に学習済みです。
しかしながら,学習をすることによって,間違った認識をしていることは分数以外の単元でもたくさんあります。
この,分数の単元では,分数として表現するうえで重要な,何を基準としているのか,
何を1として考えているのかということが,学習し慣れてくると欠如してしまいます。
今回の授業では,子どもたちの考えの中から欠如している基準を思い出してもらい,
その基準がいかに大切であるかを実感してもらう授業を行いました。
授業
「ピザ1/2とピザ1/3ではどちらが大きいでしょうか。」
子どもたちは今までの学習を基にし,分数の意味をとらえ考えます。
・1/2はピザを2等分したうちの1つ分。1/3はピザを3等分したうちの1つ分。
子どもたちは分数の意味をとらえ正しく表現をしています。
しかし,このように表現するにはある重要な条件が必要なのです。
そのことに子どもたちは気づいていません。それはあたりまえのことだとして認識しているために不思議に思わないのです。
そこで「本当に1/2の方が大きいのかな」と揺さぶりを掛けます。
すると,子どもたちの中から
「1/3のほうが大きい時もある」
と返事が返ってきました。
話を聞いてみると
「1/2の方のピザが小さくて,1/3の方のピザが大きければ,1/3の方が大きくなることもある。」
授業の中で分数を扱うときには基本的には基準が同じであるとして扱っていますが,
日常生活において,必ずしも同じであるとは限りませんし,会話の中で何を基準として分数を取り扱うかというのはとても大切なことです。
つまり,1/2や1/3と表現していましたが,そもそも基準となるピザの大きさについては何も触れていないのです。
基準となるピザの大きさが等しければ,1/2の方が大きくなります。
しかし,基準となるピザの大きさが異なる場合には,必ずしも1/2の方が大きいとは言えないのです。
子どもたちは,何を基準として分数を表現するのかが大切であると学びました。
次に
「ノートルダムの大きなプールの水1/2Lを500mLのペットボトルに入れることができるだろうか」
と問いかけました。
文章化し,黒板に書いてしまうと気づいてしまうので,あえて黒板には書かず口頭で伝えました。そしてほとんどの子どもたちは持ってくることは不可能であると答えました。理由を聞いてみると
「大きなプールの水1/2Lはプールの水半分のことだから,小さいペットボトルには入れることは無理です。」
と答えることもたちが多く,表現として1/2Lを使っているのにもかかわらず,プールの水半分であるという誤解を持っていました。
しばらく,子どもたち同士で話し合いをさせていると,少しずつですが,1/2Lの本当の意味を理解し始めた子どもたちが出始めました。
そこで,改めて理解した子どもたちに発表させてみると
「1/2Lはプールの水を基準にした時の半分という意味ではなく,1Lを基準としたときの半分,つまり500mLのことだからペットボトルに入れることができる。」
一人の発表で,ほかの子どもたちのほとんどが納得し理解をしていました。
分数において単位がつくかつかないかは大きく意味が異なります。日常生活でも,単位を付けて表現するのか,つけて表現しないか考えて伝えなければ,大きな誤解を生むことになります。
日本において,分数は日常生活でなじみが薄いものです。街中に分数の表現があふれているわけでもなく,会話の中に登場するぐらいで,それも割合を表すために使うことがほとんどでしょう。なじみが薄い分数であるからこそ,しっかりと意味を押さえ,正確に表現できるよう,これからも授業を行っていきたいと考えています。
登録日:2014年7月20日/更新日:2014年7月20日