授業紹介 クローズアップ 6月号 4年理科「初夏の自然」
登録日:2013年6月20日/更新日:2013年6月20日
2013年度 理科 研究部目標『身近な気づきから、推論する力を育てる授業』
小学校での理科学習は、身近な生活と結びついた教材がたくさんあります。しかし、教科書に単元として登場し、先生の説明を聞きながら観察したり実験したりしていると、なかなか自分たちの生活と結びつけて考えにくいのが現実です。そのため、どの単元でも、導入とまとめの段階で、単元の学習が自分たちの生活のどのようなところで結びついているのかを必ず確認します。そして、できる限り授業の中では、写真や映像ではなく、実物を見て、触って、学習することを大切にしています。
そのような中で、今回は『子どもたちが興味を持ち、対話が広がる教材の提示』を考えた4年生での理科授業を紹介します。
『ソメイヨシノ(サクラ)の葉の観察』
4年生では、日本のサクラの中でも最も多く植栽されている「ソメイヨシノ」の木を1年間通して定点観察をしています。教科書の単元では、「春・夏・秋・冬の自然」として四季の変化を調べ、観察する学習として取り上げています。
4月初旬には、まだたくさん花をつけていたソメイヨシノは、子どもたちもよく観察し、注目していました。しかし、花びらを落とし、若葉が伸びて青々と葉を茂らせてきた初夏になると、子どもたちはあまり校庭のソメイヨシノに注目しなくなってきました。そこで、今回はソメイヨシノの葉に注目し、その葉の特徴から、植物の知恵について考える授業の中で、子どもたちが改めて観察対象に興味を持つことができたら...という思いで授業を行いました。
<ソメイヨシノの虫食い葉っぱをコピーしたものを配布> < >教師の指示、支援
「これは何でしょう?」 「 」教師の発問
・ 気持ち悪い。虫に食べられている ・ 子どもたちの意見、つぶやき
・ きれいな形に食べてある
「どんな大きさの虫が、どこから食べ始めたのでしょう?」
・ 端から順に食べているものと、真ん中から食べているものがある
・ 左右同じ形に食べている
→ 葉が生えてすぐ広がる前に食べたから、右と左が同じ形に食べられていると思う
・ 小さい穴は小さい虫で、大きい穴は大きな口の虫が食べた
<ソメイヨシノの葉を好んで食べる虫を紹介>
<ソメイヨシノの葉を配布>
「ソメイヨシノの葉をひとり1枚ずつ、じっくり観察してみましょう。」
「何か気づいたことはありませんか?」
・ 葉脈がとても細かく葉全体に広がっている
・ 葉の外側がギザギザになっている
・ 葉のつけ根のところに豆みたいなものがついている
・ いい香りがする
「葉のつけ根にある豆みたいなものは、何でしょう?」
・ ここから新しい葉が生えてくる (×)
・ 豆みたいなものが大きくなって種になる(×)
・ ここに水や養分をためている(×)
(間違っている意見については、はっきり違うことを示す)
「これは、みつせんと言って、ここから甘い蜜が出てきます」
「さて、なぜ花ではなく、葉のつけ根から蜜が出てくるのでしょう?」
・ 葉を食べにきた虫を、蜜を吸いにきた虫に追いはらってもらうためのソメイヨシノの知恵
<蜜を吸いにきたアリの写真を紹介>
「これは、仮説と言って、おそらくそうだろうと言われている話です。蜜せんがある本当の意味は、ソメイヨシノだけが知っています。植物もいろいろな知恵を使って、命をつないでいこうとしているのですね。」
「この賢い植物が、これからどのように変化していくか、観察を続けましょう。」
じっくりものを見て、いろいろな発見をすることは、観察する教材とどれだけ対話できたかということにつながると思います。子どもたち同士で意見を交わす対話力を育てる中で、観察対象との対話も大切にしたいと考えます。
今回の授業は、仮説ではありますが教師が到達したい結果があり、発問が誘導的になってしまったことが反省点です。子どもたちが観察対象に興味を持つことについては成功したように思いますが、より対話を促すためには、クラス全体での発表形式よりもグループワークを増やしていくことが大切であると感じました。
4年生理科担当 神先 雅巳
登録日:2013年6月20日/更新日:2013年6月20日