3月12日(火) ぼくの選んだ聖書のみことば
登録日:2013年3月12日/更新日:2013年3月13日
毎年この時期になると、NDホール周辺の廊下の窓際には、聖書のみ言葉の書かれた色紙が飾られます。今朝も一年生の数人の子どもたちが、自分たちのパートナーのお兄さんやお姉さんのものを見つけようと一枚一枚手にとって裏を見ながら名前を探していました。
6年間聖書の話を聞いたり聖書を読んだりしながら、心に特に残った言葉や座右の銘にしたい箇所を選び、色紙に書きます。色紙に書いている時間はわずか数分間ですが、言葉の長さによっては改行しなければなりませんので、書く前に結構時間がかかります。色紙を手にとって眺めたり字配りを考えたりし、ようやく筆の中の墨を穂先に押し出して書き始めるのです。
書く直前になって、自分の選んだ聖書の箇所について意味を確かめる質問をする子どもがいたり、また、好きな箇所がどうしても二つあるのでどうしたらよいかと相談に来る子どもがいたりして、いかに真剣に短冊に向き合っていたかがわかりました。書き終わった後も空いているスペースに色を塗ったり、墨絵風に筆で簡単な絵を添えてもいいことにしました。
出来上がった色紙を手にとって満足そうに眺めている子どもがいるかと思えば、短冊を入れる袋が破れてしまったり、"シスター しきしのまんなかに スミが ぽちゃっと落ちてしまった どうしよう"と助けを求めに来る子どももあったりして、今年もハプニングが続きました。 実は毎年のことながら、たとえ、間違ったり、墨を落としたりしても、「2枚目は無い・ひとり一枚」で、消しゴムや修正インクは使わず、それ以外の方法で工夫する約束になっていたのです。 しばらくしてその子は"シスター ぼく あれを太陽にします "と言って、短冊の真ん中に落ちた黒いかたまりの周りを黄色のフェルトペンで囲み、下に墨絵風に山の絵をふたつ書いて私のところに持って来ました。 何と、ほんとうに太陽が山の上に輝いている絵になったのです。この男の子が選んだみ言葉は「あなたがたは 世の光 である」 でした。 失敗を最高の出来栄えに変えたのです。 楽しい性格のこの子は、あっさりした気質で、ドライなタイプと思っていましたが、深い感性の持ち主でした。 一昨日のお別れ会で彼がどれほどノートルダムを愛し、卒業して行くことに喜びと同時にさびしさを感じているかがわかりました。プログラム最後の6年生全員による「旅立ちの日に」を、泣きながら、大粒の涙を流しながら、それを手でぬぐおうともせず、真っ直ぐに立って、大きな声で歌っているのです。肩は上下に大きく震えているのが私にもよくよく見えました。感動しました。そして、かれにこの言葉を送りたいのです。 " あなたは すでに 世の光 ですよ" と。 |
シスターベアトリス田中範子
登録日:2013年3月12日/更新日:2013年3月13日