登録日：2013年10月 8日／更新日：2013年10月 8日

『ネパールバンデプールの子どもたち』―運動とのかかわり―
【子どもたちの運動能力について】

　前回はバンディプールの子どもたちの遊びの環境についてお知らせしました．環境が恵まれないにもかかわらず，彼らなりに遊びの創意工夫を凝らし，体に刺激を与え運動体験を楽しんでいました．私がバンデプールにいく前に予想していたことは，この地域の子どもたちは山道を歩き，家事を手伝い足腰は日本の子どもたちよりはるかに強靭で，特に生命維持能力といわれる持久力はすばらしいものを持っているのではないかと大きな期待がありました．しかし，授業を参観しその思いはすぐに打ち消されました．特に女子の動作にそのことを強く感じました．それは子どもたちが彼らの遊びの中で獲得してきた運動能力(スキル)を大人(先生)たちが活かしきれていないということです．子どもたちの自らの学びは，恵まれない遊びの環境の中でも育っているのですが，それをさらに高める大人(先生)の手立てがとても少ないということです．
　私は最初の授業で3分間走を設定し実施しました．彼らの走りを眺め，3分間は到底持たないなと判断し1分30秒に修正しました．運動(スポーツ)に関する技術の習得の手立てには，次の二つが考えられます．スポーツという言葉は｢遊び｣という言葉から派生したと言われている通り，自由で誰にも束縛されない中で楽しみながら，夢中になって遊んでいるときに獲得されていくものと，もう一つは学校での授業や公的及び私的機関で行われる場で獲得されていくものです．特に子どもにとっては自分自身の体へのはたらきかけと外からの知的な言葉や映像と意図的に取り込まれた技術的な運動体験があってこそ成長するのです．ＮＤバンデプール校の子どもたちの運動能力が良い状態でない背景には次のような事情が考えられます．
　映像(視覚)から入る運動情報は子どもたちにとってこの上ない生きたものでとても重要です．私が見る限り，このバンデプール地域ではテレビの姿を見たことがありません．一部のホテルを除いてテレビが一般家庭にないということです．映像を通しての子どもたちへの運動に関する情報が提供されていないということです．また，公立校では体育という教科の指導がありません．ノートルダムバンデプール校においては体育の授業は週に2時間あります．が，その内容はお粗末なものでした．ＮＤバンデプールに勤める先生はほとんどがＮＤ校の出身ではありません．だから，先生自身が体を動かす楽しさを体験していないと同時に教えるすべを学んでいないゆえに，先生たちの運動に対しての興味，関心，意欲は非常に薄いのです．その先生たちの興味，関心，意欲を少しでも高めてもらうために，シスターイバンジェラやシスターミリアムテレーズがうちの先生たちにも運動の楽しさを体験させてくださいと我々にけしかけ，体育理論と実技の時間，ゲームを楽しむ時間を準備してくださいました．その姿を子どもたちに観戦させるイベントも計画してくださいました．私たちは，体育で使用する用具が少ないというハンディがありますが，ちょっとした工夫をすることによって，子どもを遊ばせ楽しませることを試みました．京都ＮＤ小から持参した6本のロープはいろんな場で使われ役立ちました．シスターたちが計画してくださったイベントに参加し子どもたちや先生たちはグレイトエキサイテング，大成功に終わりました．
ＮＤバンデプール校の先生方の学びが付加価値をつけ，子どもたちの身体能力の進化に大きな影響を及ぼし，更なる努力によって，今以上の成果を上げることを期待したいと思います．
2013．10．8(火)　ＮＤダイアリー担当　　三笠　　正治

登録日：2013年10月 8日／更新日：2013年10月 8日