私は子どもの遊び,テレビのスポーツ,競技場で生のゲームを見るのが大好きです。
 それは誰からも束縛されず遊んでいる子どもの姿から,その子が持っている自由な動き,(「なるほどなあ,あの子の動きは理に適っている,あの子はそうでないな」とか)がストレートに読み取れるし,また世界のプロの選手のずば抜けた動きを実感できると同時に, どうしてこんな動きができるのかなと考えてしまうからです。
 例えば,MBL(アメリカプロバスケットボール)やFIFAワールドサッカーやプロ野球の選手の動きは実にすばらしい。ボールをコントロールしながら,目の前のディフェンスの動きを確認し,味方と相手の動きを読み取り,どの味方にどんなボールを送ればよいか(「実行」),また打者が打ったボールの音を耳で感じ,目で測り,ボールの落下点と自分のグローブとの距離を測って走る,瞬時にいくつもの行動内容を認知し,的確なボールを味方に渡す。この力強く,素早い動きとしなやかな身のこなし(「実行能力」)は、何処から生まれるのであろうか。何が支配しているのであろうか。
 人を含めて動物の運動の実行に脳が深く関わっていることは神経科学では常識であるといわれている。上述したプロのスポーツ選手の行動のように、適切に運動するためには身体の内外からの感覚情報が必要であることは言うまでもない。視覚は脳の後頭葉皮質,聴覚は側頭葉上部皮質に中枢を持つ。ということはこれ以外にも運動に関わる脳の重要な部位が存在することがわかる。つまり,技術を覚えたり,位置関係を認識したり,取り込んだ情報をどこかに送って組み立て,さらに適切なものにしていく部位などが考えられる。そのように考えるとプロ中のプロが見せるファインプレイは,まさに脳が司る実行機能を完璧に操作した芸術品であると言っていいだろう。
 では,プロの選手たちが長い年月を賭け,厳しい練習を重ねて形成していった運動に関わる脳の神経回路の構築は子どもたちにもできるのであろうか。
 次回は脳の神経回路の形成に視点を当て,「運動と脳とのかかわり」について、第3回目のNDダイアリーで詳しく紹介したいと思います。

指導主事  三笠 正治