運動神経とは,運動技能の良し悪しや運動の習得能力,反射的動作など,様々な要素を複合的に含み,運動全体をコントロールする能力を備えた脳の神経系のはたらきを表しているものと解釈されます。むしろ,それは生成されるものと解釈した方がよいかもしれません。

このように考えれば,運動神経が悪い,運動センスがない,運動オンチということは,生まれつき身に備わっているのではなく,後天的に引き起こされるもので,脳の中にある運動のプログラムやモデルの生成と修正 ( 神経系の働き ) がかみ合わなかったのだと理解できます。

ということは,脳の神経系の発達が著しい 12 歳ぐらいまでに,年令に応じた,いろいろな運動の基になる動きを身につけさせ,脳を活成化させる ( 脳の神経回路に運動のプログラムやモデルを生成しておく ) ことがとても重要であると考えられます。テレビやテレビゲームで室内にこもることなく,外で思い切り遊ばせることが大切です。

入学時の子どもの様子を見ますと,よく遊んだ経験がある子どもとそうでない子の動きの差は年々広がっております。二極化が進んでいるということです。体力・運動能力はこの 10 年間で 10 %減少,学力も 10 %減少,学習意欲は 25 年間で 30 %も減少したということです。顕著に現れているのが幼児,小学生です。体力や運動能力の水準が高い子どもは運動や学習に対する意欲も高く,日常生活習慣についてもより好ましい状態にあることも明らかになりました。

脳科学の研究によって,脳と運動に関する関係の解明が急速に進み,運動によって学習や記憶,思考などの脳のはたらきが高まるという興味深い事実が実証されてきました。

次回はこの脳と運動との関係について ①脳による運動の制御という側面,②運動が脳に及ぼす影響という側面から考えた体育授業のあり方についての考えを述べたいと思います。

 

 指導主事 三笠正治