タイガーマスク さま

 昨年の暮の頃より、何年ぶりかでご出現くださり、その後も北海道から関東、関西、四国、九州、沖縄に至るまで、日本各地でご活躍くださっています。どれほど多くの子どもたちを喜ばせてくださっていることでしょう。否、子どもよりも、そのような行いをしてくださるお心に、私たち大人が感動しているのです。自分さえよければいい、自分の身内さえ、また自分の国さえよければいい、という“自己虫”にむしばまれている人間の多い今の時代に、まわりの人々の幸せのために、そっと善行をされるその美しい心にうたれているのです。

 差出人のなまえも告げずに、そっとランドセルや文房具類を玄関先に置いて立ち去るというこの行為は、瞬く間に周囲に伝染し、昨日も今日も増え続けています。いろいろな事情で家族と一緒に新年を祝うことの出来なかった子どもたちにとって予想外のお年玉になったことでしょう。また、ランドセルや文房具類も施設の責任者の方々にとっては財政面で大きな助けとなったことでしょう。

 けれども、今回これほどまでに私たちの間で話題になり、また、大きな反響を呼んだのは、贈られた「物」へのありがたさよりも、他者の幸せのために、他者を喜ばせるために積極的に善行をされたということだからではないでしょうか。その後も文房具に限らず、その土地で収穫された農作物や名産といわれる菓子類にいたるまで善意の品物が届けられています。物品だけでなく金一封として送られて来ている場合もあります。いずれも、真の送り主の名は明かされていません。

 誰かが始めたこの行為がまるで何かの運動のようにどんどん広まっていきます。昨年のクリスマスに最初にランドセルを贈った方は、果たして、これ程まで世間を騒がせることになろうとはゆめゆめ想像もしておられなかったことでしょう。私は素直にこの方やその後に続くタイガーマスク様たちに心から感謝しています。そして私ももうひとりのタイガーマスクとして、子どもたちに夢や喜びを与える存在になりたいと思います。

 また、ノートルダムからもタイガーマスクがどんどん生まれ、成長し、他者のためによろこんで善い業に励むことを趣味にするような雰囲気が、学校全体に及びますようにと願う今日この頃です。

 

校長 シスターベアトリス田中