今年の正月、久しぶりに実家に帰省しました。何気なく父の部屋に入ると、懐かしい本 に出会いました。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』です。この本に出会ったのは、中学1年生 の時。その時も何気なく父の部屋に入り、何気なく本をとったのを覚えています。その本 の中には、激動する時代の中で必死に生きた男たちの姿がありました。私はすっかり歴史 に魅了され、気づけば今、小学校で社会科を教えています。

 先日図書室に行く用事がありました。そこには、一心不乱に本を読んでいる子どもたち の姿があります。人気の「かいけつゾロリ」から、「チョコレートのひみ つ」など多種多 様な本を手に取っています。子どもたちに失礼かもしれませんが、「チョ コレートのひ みつ」はおもしろいのだろうか、と思う時もあります。しかし、そ の本を 一心不乱 に読んでいる姿を見ると、昔の自分を思い出すのです。

中学時代の私は、歴史の本を読んでいるなんて言うと、クラスメイトにからかわれると 思い、“隠れ歴史好き”としてひっそりその知識を蓄えたものです。もしかすると「チョコレ ートのひみつ」を読んで、将来お菓子会社に就職したり、世の中が驚く新種のチョコレー トを発明する子どもが出てくるかもしれません。私のように、何気なくとった一冊の本や 人の興味をあまりひかない本が、自分の人生に影響を及ぼすこともあります。 そうした心 に残る本に出会う経験は、これからの人生において何物にも代えがたい 宝物になるのでは ないでしょうか。

ノートルダム学院小学校には、朝読書の好きな子どもがたくさん います。 この子たちが、 どうぞ人生の一冊に出会えますように、と心から願うばかりです。

4年担任  松谷如雪