けさは正門に立っていて、秋の風を感じました。

  そして、朝読書の時間に校内を歩き回っていると、3年生の廊下から虫の音が聞こえてくるではありませんか。音の先は、夏休みの図工の作品を乗せたベンチの下。虫かごの中では鈴虫たちが競い合って羽根を鳴らしていました。秋が近いなと思いました。

  去りゆくこの夏は、遠泳をはじめとするいくつかの感動の花火が上がりましたが、その最後の大花火を紹介します。

  5年生のA君のことです。

  A君は水泳が得意ではありませんでした。6月、4年生夏の初心者特訓以来のプールに入ったA君にとって、平泳ぎは大きな難関でした。Cグループでの練習時、プールに入っていた私が見た光景は、必死になってプールサイドへ逃げようとするA君の姿でした。

  しかし、A君はがまんをし続け努力しました。教師もみんなでA君を励ましました。その結果、本番前にBグループに上がりました。そして、本番では、最後列ですが、Bの子どもたちとともに45分間、浜島の海を泳ぎ切りました。

  「完泳」して岸に上がってきたA君は、疲れを顔に浮かべながらもカメラに向かってこう言いました。「深いところで泳いで…しんどかったけど、(泳ぎきって)一生の思い出づくりができました」感動的なこのコメントでA君の遠泳ドラマは終わったと思っていました。しかし、実はそうではなかったのです。

  8月20日、A君は大阪の門真市にある「なみはやドーム」の水泳記録会に参加しました。

これは西日本私立小学校連合会が主催するもので、今年で52回目を重ねます。出場選手は、各校の河童たちなのですが、A君は自分から進んでそのハイレベルの大会の「50メートル平泳ぎ」に出たというわけです。本番に向け、本校で「上級者指導」という練習がおこなわれました。その時のA君の自己ベストは82秒でした。トップレベルの子は50秒を優に切って泳ぐ大会なので、A君のはかなり遅いタイムです。でも、世界の公式大会もおこなわれるなみはやドームの50メートルコースを泳ぎ切って自己ベストを更新したいというA君の向上心はすばらしいと思って応援しました。

  そして、A君はみごと75秒のタイムで泳いだのです。6月のプールではよれよれになって泳いでいたあのA君が、まっすぐに、そしてしっかり足をキックさせ、手で水をしっかり掻き続け、練習時のタイムをなんと7秒も縮めてゴールインしたのです。

  夏の感動花火大会の、最後の大きく美しい花火でした。