この時期にいつも思い出すのはライラックです。年に1度ほんの数日間だけ、小さな薄紫色の花をつけます。この木は南ヨーロッパが原産地で国内では北海道や東北地方などでよく育ちます。小学生だった頃、祖母が小さな苗を北海道のお土産としてプレゼントしてくれました。本やイラストでしか見たことのない憧れのライラックに出会えて、とても嬉しかったことを昨日のことのように思います。細くて今にも折れてしまいそうなその苗は実家の庭に根を下ろし、幾度も挿し木をして増えていきました。こまめに手入れをしていたのは父。出勤前に必ず庭に出て雑草を抜き、水をまき、季節ごとに肥料をやり…。そのライラックもずいぶん大きくなりました。先日その枝の一部を庭に植えました。今は亡き祖母や父の想いがこめられたライラック…。いつまでも大切に育てたいと思っています。

 先日4年生は稲作体験の一つ、「田植え」をしてきました。田んぼには水が張られ、よく育った苗が子どもたちを待っていてくれました。初めての田んぼで四苦八苦しながら、一生懸命苗を植えていきました。しっかりと植えられているものもあれば、そうでないものもあります。子どもたちが植えた後、農家の方や先生方が田植えの仕上げを何時間もかけてして下さいました。稲刈りや脱穀までの間、子どもたちはどれだけ田んぼで活動ができるのでしょう。農家の方が大切に育てた稲の苗、実るまでにどれだけ多くの手間をかけていかなければならないのでしょうか。ふだん稲の世話をすることができないからこそ、稲の準備や、手入れなどにいつも携わって下さる方々の思いに心を寄せていきたいものです。多くの方々に支えられて、この日の体験ができたことを感謝し、6月の山の家学習で成長した稲の観察を楽しみにしていてほしいと願っています。

4年生副担任 稲森 真弓