1年生の特別国語は、「音声言語の領域」を中心において、様々な角度から、国語科の指導領域全般にもふれていきます。
 1年生が楽しみにしているのは、ブックトークに類似した絵本の読み聞かせです。ブックトークは本来、少人数で行うのが理想的なのですが、クラス全員を対象にしなければならないという条件のために、クラスの中で行う時はテレビ画面の映像に置き換えて読んでいきます。それでも、できるだけ、児童を話の展開の中に入り込ませようと工夫を重ねます。

ウクライナの民話「てぶくろ」


てぶくろ  ウクライナ民話
絵 エウゲーニ・M・ラチョフ
訳 うちだりさこ
福音館書店

おじいさんが落としていった「てぶくろ」の中に、森の動物たちが次々と、はいっていきます。
最初に住み始めた小さな「ねずみ」が、やってきた「かえる」を「どうぞ」と招きいれます。この「どうぞ」が、「うさぎ」「きつね」「おおかみ」「いのしし」と、「わたしも入れて」と次々にやってきた大きな動物におよびます。最後は大きな「くま」まではいるのです。

そんな時、おじいさんは「てぶくろ」を落としたことに気がついて、森に戻って来るのですが、先に犬が走って来て、むくむくと動いている「てぶくろ」にほえたてます。動物たちはびっくりして、あっという間に「てぶくろ」から這い出し、森のあちこちに逃げてしまいます。残された「てぶくろ」はおじいさんの手にもどります。

 なんともいえずさわやかな終わり方です。この絵本は幼稚園の時に読んでもらっているので、よく知っている作品なのですが、今でも声をあげて喜びます。読み始める前に、私は課題を出しました。
 「お話について、考えてください。考えたことを発表しましょう。」 
 クラスの三分の一ほどの児童が次のような内容の発表をしました。
 動物たちが「てぶくろ」の中にはいることができたのは、動物が小さくなったのか、あるいは、「てぶくろ」が大きくなったのか、どちらかだと思います。とにかくその時に、何か不思議なことが起こったのです。

 そこで、私は、もう一つ課題を重ねました。「では、その不思議なことを起こした魔法の『ことば』は何だったのでしょう。」この質問には半数以上の児童たちの手が挙がりました。「では、私に、内緒話で知らせてください。」
 一人ずつ、私の耳元でささやいてくれました。「あのね、魔法のことばはね、『どうぞ、どうぞ』だと思います。」 みんなが内緒話を終えた時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴りました。こみあげてくるうれしさを味わいながら、私は1年生のあいさつに応えて深く頭を下げました。

国語科 シスターアンミリアム木村