7月9日の遠泳合宿の最終日。
照りつける真夏の太陽の下、自分の成長を確信して浜に立つ、5年生の雄姿がありました。

「この遠泳合宿で、自分が成長できたと思う人は手を挙げなさい」
という呼びかけに、胸をはって右手を挙げる5年生の姿。

三重県志摩市浜島の海では、この遠泳合宿を乗り越えた者の数だけ感動が生まれます。
私は昨年に引き続き、2年続けて担任として5年生を遠泳合宿に連れて行きました。
そして、今年もまた新しい感動を体感することができました。

私のクラスのある男の子は、5年生に上がった時に、平泳ぎがまったくできませんでした。
かいてもかいても頭は沈み、蹴っても蹴っても体は前に進みません。
振り分けはDグループ(泳力順にABCDと分かれます)。体育専科の先生方がつきっきりで指導にあたります。
遠泳の平泳ぎは顔を常に水面から上げて泳がないといけないのですが、みんな初めはそれができません。
もちろん彼も顔を一瞬だけ水面からだしてプハッと息をして、また潜るような泳ぎです。
これで本番は大丈夫だろうかと、正直心配でした。

合宿が近づくと、C,Dグループは平泳ぎの補習があります。もちろん彼もそれに参加しました。
毎日毎日特訓です。プハップハッと必死で練習します。目をあける余裕がないのか、いつもプールサイドぎりぎりまで
泳いで、「こっちこっち!」と言われれば回って泳ぐといった感じです。

教師をしていていつも驚かされるのは、小学生の成長の早さです。
いつの間にか彼は25mを泳ぎきり、50mを泳ぎきり、合宿1週間前にしてなんとB1グループにまで上がりました。
それでも泳ぎは目をつぶったまま。顔をあげることはできません。しかし今までの練習で、彼から弱音を聞いたことは一度もありませんでした。
寡黙にひたすらに練習をした結果がB1グループへの昇格でした。

7月8日のB1グループ約60人の遠泳本番。隊列泳ぎ40分。未知の距離。自分の限界のその先にゴールはあります。
泳ぎの苦手な児童にとっては無限とも感じるその40分を、必死に戦い続けなければいけません。
後ろ半分は途中で隊列が崩れていきました。遅れていく児童は伴泳の先生がマンツーマンで一緒に泳ぎました。
その中で彼はなんと40分を隊列を守り続けながら泳ぎきったのです。
浜に上がった後その成果を称えたくて近寄ると、その子はこうべを垂れ、手を目じりにあてて静かに泣いていました。
練習中は決して逃げず、自分と戦い続け、前に進み続けた彼が初めて見せた、しおらしい姿でした。
「よくがんばったな。」と肩に手をあてると、私の目からも涙が溢れました。

   
子どもの数だけ感動がある。
それがノートルダムの遠泳合宿。
その学校で教鞭をとることができる今の自分を誇りに思いながら、このNDダイアリーを書きました。

彼を含めて、この厳しい遠泳合宿を乗り越えた5年生全員がきっと、
神様の祝福のもと、強く逞しく成長していくことができますように・・・。

5年生担任 一柳 丞